クナッパーツブッシュ指揮ベルリン・フィル ハイドン 交響曲第94番「驚愕」ほか(1950.2.1Live)

クナッパーツブッシュはゆったりしたテンポを好んだ。そして聴き手はそのテンポでこそ、たっぷり息をすることができる。彼の演奏はときおり長くなることがあったとしても、けっして間のびして感じられることはなかった。オットー・シュトラッサーの言うよう、「たっぷり息することのできるテンポが正しいという言い方ができるなら、それは彼の指揮と彼の解釈にあてはまる」。
ルーペルト・シェトレ著/喜多尾道冬訳「指揮台の神々—世紀の大指揮者列伝」(音楽之友社)P277-278

筆舌に尽くし難い天才的な棒。深い呼吸、タメと絶妙な間、そして、テンポの見事な伸縮。同時に静まる観客の心からの感動、すべてが一つに包み込まれた素晴らしいハイドンだと思う。第2楽章アンダンテの、例の有名な主題が爆発する瞬間の意味深さ。また、終楽章アレグロ・モルトの、ブレーキを踏み、ニュアンス豊かな楽想がこぼれる瞬間の恍惚。

・ハイドン:交響曲第94番ト長調Hob.I:94「驚愕」
・ニコライ:歌劇「ウィンザーの陽気な女房たち」序曲
・チャイコフスキー:バレエ音楽「くるみ割り人形」組曲作品71a
・ヨハン・シュトラウスⅡ世:喜歌劇「こうもり」序曲
・ヨハン・シュトラウスⅡ世:ピツィカート・ポルカ
・コムツァーク:ワルツ「バーデン娘」
ハンス・クナッパーツブッシュ指揮ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団(1950.2.1Live)

ベルリンはティタニア・パラストでの実況録音。今にも眼前に姿を現しそうな、古い音質だけれど実に生々しい音楽が世界を舞う。喜びに溢れる「ウィンザーの陽気な女房たち」序曲の見事な加速よ。また、後年のスタジオ録音を差し置いて、興に乗る「くるみ割り人形」組曲。ライヴのクナッパーツブッシュの真骨頂(音に異様な迫真がある)。特に、第7曲「葦笛の踊り」のあまりの愉しさよ。

極めつけは喜歌劇「こうもり」序曲!!何という巨大さ!!何という間(その場に居合わせた聴衆は卒倒したのでは?)!!同様に、ピツィカート・ポルカの、大曲のような恐るべき交響的(?)響き!!!なるほど十八番のコムツァーク「バーデン娘」も、巨大なライヴならではのクナッパーツブッシュらしい「遊び」に溢れる名演奏だ。

人気ブログランキング


コメントを残す

このサイトはスパムを低減するために Akismet を使っています。コメントデータの処理方法の詳細はこちらをご覧ください

アレグロ・コン・ブリオをもっと見る

今すぐ購読し、続きを読んで、すべてのアーカイブにアクセスしましょう。

続きを読む