
今も昔も変わらない風景がそこにはあった。
1987年11月8日、ニューヨークはカーネギーホールでのエイズ撲滅運動協賛コンサートの記録。時の大音楽家たちがレーベルの枠を超え一堂に会した演奏会は見事に成功し、1,500万ドル近い収益を上げ、直ちに関係機関に寄付されたらしい。
おりしも5月2日付の新聞では、ニューヨーク市と隣接するニュージャージーの一部を加えた地域では、エイズの感染率は8%で、とりわけ25歳から44歳の男性の感染率は、何と24%に達していると発表され専門の学者も「ニューヨーク一帯のエイズ感染率は全米のみならず、アフリカ諸国を含めても最悪の数字だ」と述べているように、ニューヨークを中心にした演エイズ患者の救済、さらにエイズ治療法の開発援助に対する義援金を募るキャンペーンでもある。
(出谷啓)
~POCG-1031ライナーノーツ
あえて多くを語るつもりはないが、この一文を眺めてみただけでも人間の意志というか企図されたシステムが見え隠れするのだから何とも世の理不尽、あるいは矛盾を思う。そう、世界は間違いなく矛盾の中にあるのだ。
音楽家も聴衆もいわばお祭り騒ぎ。
それゆえに演奏の疵は多少あれど、歌も管弦楽も、あるいは器楽もすべてに熱気に溢れ、力が漲る。全盛期を過ぎたであろう(?)パヴァロッティの円熟の歌がまた素晴らしく、指揮を分けるバーンスタインもレヴァインもとにかく楽しんでいる様子が音楽の隅々からうかがえる。それぞれの指揮はもちろん素晴らしいけれど、一層心を打つのが二人のピアノ・デュオ。モーツァルトのアンダンテが何て可憐に響くのだろう。
ちなみに、オーケストラはニューヨークの下記の主要オーケストラの団員によって特別に編成されたのだそう。
アメリカ交響楽団、ブロンクス・アーツ・アンサンブル、ブルックリン・フィルハーモニック交響楽団、メトロポリタン歌劇場管弦楽団、ニューヨーク・シティ・オペラ管弦楽団、ニューヨーク・シティ・バレエ管弦楽団、ニューヨーク・フィルハーモニック、オルフェウス室内管弦楽団、セント・ルークス室内アンサンブル、ソリスティ・ニューヨーク室内アンサンブル