モーツァルトのピアノ・ソナタ第13番変ロ長調K.333。この曲の冒頭を聴くと、かつて NHK-FMで好評を博した渡辺徹の「おしゃべりクラシック」という番組をどうしても思い出す。ピアニストの熊本マリや伊藤恵などを相方に迎え、渡辺徹が独特の饒舌振りを発揮する、当時としてはおしゃべり中心の画期的クラシック音楽番組であった。
レギュラー・コーナーに「よく聴くとどこか似ているぞコーナー」というのがあったのだが、それが実に面白かった。要は「タモリ倶楽部」の空耳アワーのクラシック版のようなもので、クラシック音楽の旋律とポピュラー音楽の似ているメロディーを発見した視聴者が投稿、リクエストするというもの。
今でも忘れないのが、モーツァルトのレクイエムのSanctus(聖なるかな)一節の“Hosanna in excelsis.”が大阪弁で「おおさーかー、いいでっせー」と聴こえるというもの。ちょうど放送時間のとき車を運転しながら聴いていたのだが、思わず大爆笑した。確かに「おおさーかー、いいでっせー」と聴こえるのだ。モツレクの音盤をお持ちの方は、試しに件の部分を聴いてみてください。少なくとも僕の所持するベーム盤やバーンスタイン盤ではそのように確かに聴こえます。これを発見した人はある意味天才です。誰がそんな風にこの音楽を聴くのか・・・。ほとんど漫才のような発想。
ところで、10月に滋賀県のとある大学での「公開講座」に出演することが決まった。「癒し」をテーマにピアノの生演奏を絡めながら、入門者相手に楽しくクラシック音楽の素晴らしさをお話しようと考えている。ご尽力いただいたK氏に感謝します。
モーツァルト:ピアノ・ソナタ第13番変ロ長調K.333
リリー・クラウス(ピアノ)
1783年、すなわちモーツァルト27歳の年の作品。モーツァルトの音楽はチャーミングである。
稀代のモーツァルト弾きとして評価されたリリー・クラウスも亡くなって20年以上が経過する。80年代以降来日しなかったゆえ、僕自身は生演奏に接していない。しかしながら、クラシック音楽にはまりだした10代後半の頃から、56年録音のモーツァルト「ソナタ全集」やこのステレオでの新録音などは何度聴いたことか・・・。
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