バーンスタイン指揮BBC響 エルガー 自作の主題(エニグマ)による変奏曲ほか(1982.4録音) 

2011年の6月だったか、ダニエル・ハーディングが新日本フィルとのチャリティ・コンサートで、3月に起こった東日本大震災の犠牲者を追悼し、冒頭にエルガーのニムロッドを演奏した、あのときの、得も言われぬ感動は今もって忘れられない。

2011年は、結果的に多くの日本人が覚醒した年だった。
個性が多様化する中で、「万法帰一」という、意識が文字通り一つに収斂されていくという、そういう体験をした人が多かったと聞く。大海の水を掬ったコップの水は、大海の水そのものとまったく同じものだ。色も形も違うコップが個性だとするなら、水とは僕たちの霊性そのものだ、命そのものだ。人間に限らず、すべて生きとし生けるものが有している命は本性であり、いわば大きな分母からからいただいた同一の分子だと解釈できる。そのことが心から腑に落ちたとき、人の心はステップアップするのだと思う。

あの日の新日本フィルの演奏は、ニムロッドは真に優しかった、本当に慈しみに満ちていた。

サー・エドワード・エルガーの「エニグマ変奏曲」には数多の名盤がある。
少し変化球ともいえるが、レナード・バーンスタインが80年代初頭に録音したものは、特に6分超を要する第9変奏「ニムロッド」をもって最高の演奏の一つだといえる。

エルガー:
・自作の主題(エニグマ)による変奏曲作品36(1898-99)
・行進曲「威風堂々」作品39
第1番ニ長調(1901)
第2番イ短調(1901)
・付随音楽「インドの王冠」作品66から「ムガール皇帝たちの行進曲」(1911-12)
レナード・バーンスタイン指揮BBC交響楽団(1982.4録音)

おそらくバーンスタインが最も輝いていた時期の記録ではないだろうか。
何と36分を超える悠久のエニグマ変奏曲の(大袈裟だけれど)果てしのない奇蹟。果たしてエルガー卿がここまでの大演奏を求めたのかどうかはわからないが、英国的スノッブを消し去り、あくまで初演者ハンス・リヒターが解釈したような(勝手な想像だけれど)、ワーグナー的誇大妄想(否、ベルリオーズ的ストーカー気質?)、浪漫的解釈に僕は膝を打つ。

同じく「威風堂々」の愛国心を鼓舞する、内へと向かう想念に、僕は快哉を叫ぶ。

過去記事(2010年6月1日)

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