ホロヴィッツ スクリャービン 詩曲「炎に向かって」作品72(1972.4&5録音)ほか

アレクサンドル・スクリャービン(1872-1915)。
巨匠は神秘主義なるものを掲げて音楽の革新的創造を図ったが、あの時代では気狂い扱いだったのではないか。ただし、1世紀を経た現代なら通用するだろう。時代がスクリャービンに追いついた。
それでも初期の、ショパンをより高度にしたような浪漫音楽は、中でも喜怒哀楽という人間感情の宝庫だ。

40余年前、ホロヴィッツの演奏でスクリャービンの幾つかのピアノ作品を聴いて、僕は痺れた。ドメニコ・スカルラッティの音楽もホロヴィッツで知った。
なるほどホロヴィッツに教えてもらった名曲は数多ある。そういえば、ムツィオ・クレメンティに出逢ったのもホロヴィッツによってだった。

スクリャービン没後100年を記念してホロヴィッツのスクリャービン演奏がまとめられたセットからの1枚。不健康極まりない、狂気のスクリャービンと躁鬱気質のホロヴィッツの掛け算。今後、これを超えるスクリャービン演奏はまず出ないと思う。

スクリャービン:
・詩曲嬰ヘ長調(嬰ニ短調)作品32-1
・練習曲嬰ハ短調作品2-1
・練習曲嬰ニ短調作品8-12
(1962.11.6, 13, 29 &12.18録音)
・アルバムの綴り変ホ長調作品45-1
・「練習曲集」より
―嬰ハ短調作品8-2
―変ロ短調作品8-11
―変ニ長調作品8-10
―変イ長調作品8-8
―嬰ヘ長調作品42-3
―嬰ヘ長調作品42-4
―嬰ハ短調作品42-5
・2つの詩曲作品69
・詩曲「炎に向かって」作品72
・練習曲ト長調作品65-3
(1972.4.27, 5.4 &31録音)
ウラディーミル・ホロヴィッツ(ピアノ)

ホロヴィッツは「どんな天才でもすべての作品が傑作だとは限らない。だから全集というものを作ろうと思わない。というより作れないんだ」というような言葉を残している。
それならば、彼がここに選んだスクリャービンの作品は、ホロヴィッツが太鼓判を押す逸品だということになる。幾度聴いても思う、やっぱり最高だと。

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