小澤征爾指揮サイトウ・キネン・オーケストラ ショスタコーヴィチ 交響曲第5番(2006.9Live)

一聴、衝撃を受けたショスタコーヴィチ。
(今は無き)タワーレコード新宿店10Fのクラシック・コーナーで第1楽章モデラート―アレグロ・ノン・トロッポ冒頭を聴いて、その凄まじさに思わずしばらく釘付けになったことが懐かしい。
即座にレジ横に走って音盤を確認したら、小澤征爾指揮サイトウ・キネン・オーケストラによるものだったので2度吃驚。
個人的に無視していた小澤征爾を(失礼ながら)初めて侮れないと思った演奏。
プレイヤー個々の力量がこの音楽に華を添える。
そして、小澤ならでは凄まじい推進力と外へ広がる猛烈なエネルギーに言葉を失う。

・ショスタコーヴィチ:交響曲第5番ニ短調作品47
小澤征爾指揮サイトウ・キネン・オーケストラ(2006.9.9-12Live)

長野県は松本文化会館でのライブ録音。
手に汗握る音楽は、会場で聴いたら卒倒したのではないかと思うくらいの熱量。
ショスタコーヴィチの体制への反骨精神が湧き上るほどのパッションは、4つの楽章すべてを通じて生々しく刻印される。

トゥルゲニエフ 散文詩
田舎世界

6月をはりの日、このあたりの一千ヹルスト、噫、故里、露西亜。
はてなき靑色は滿天に漲り、その上に孤雲、泛ぶが如く消ゆるが如し。日暖く靜にして・・・そよかぜぞ新乳のやうなる。
雲雀高きに名告り、野鳩くゝといふ。おともなく燕、をちこちに飛びかひ、馬の嘶、歯がみきこゆ。犬も今聲なく、靜に尾を掉りてまもりゐたり。

山内義雄・矢野峰人編「上田敏全訳詩集」(岩波文庫)P165

単に熱いだけでなく、第3楽章ラルゴも終楽章アレグロ・ノン・トロッポもあまりに美しいのである。値千金、上田敏の日本語の美しさに通じる小澤のショスタコーヴィチ解釈。

過去記事(2012年5月29日)


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