形式を逸脱したところに真のエネルギーとパッションが共存するのかもしれない。
何にせよ枠を超える勇気が重要だ。
いわゆるフリー・ジャズのはしり。
60年前の録音とは思えぬ革新。おそらく当時は、大方から受け入れられなかった代物ではないか。しかし、現代においてはこの呪術的な音調の、人の心につけ入る、これほど音楽的な音楽はないように思う。
恐るべき即興演奏に言葉がない。
空前絶後のアイラーのサックスはもはや楽器の域を超える。あっという間の30分だが、とにかくこの怒涛の音波にただただ浸ることだけを考えるべし。
お前たちは自己の精進の目標にしているものを完全に把握してない、いやそれどころか、お前たちは他人を欺瞞している、お前たちは暴力強制と財産の私有とを否定しながら、同時にこれを利用しているじゃないか。こういうのがわれわれに対する君の非難の要点のようですね。そりゃ無論、われわれが欺瞞をこととする奴らなら、共に談ずるにも当らないし、憤慨や非難を受けるにさえ値しない。ただただ軽蔑さるべき存在でしょう。またわれわれもその場合には、そうした軽蔑を甘受します、なぜというに、自己の取るに足らぬ存在であることを自認するのは、われわれの掟の一つなのですからね。が、しかしながら、もしわれわれが真剣な態度で自分たちの信奉する真理に向って歩一歩精進しているのだったら、その場合には、欺瞞云々という君の非難は、正しくないと言わねばなりません。
~トルストイ/原久一郎訳「光あるうち光の中を歩め」(新潮文庫)P87
・Albert Ayler Trio:Spiritual Unity (1965)
Personnel
Albert Ayler (tenor saxophone)
Gary Peacock (double bass)
Sunny Murray (percussion)
2部に分割された名曲”Ghosts”のときに出現する大衆的な(?)旋律に懐かしさを覚える。
世間の評価など当てにはならない。
あるいは、時が解決するということもある。
表面、外面だけ見ていると判断を間違うもの。
心の眼で見るべし、あるいは心の耳で聴くべし。