ジョン・レノン

12月8日は忘れもしないジョン・レノンが凶弾に斃れた日。あれから27年が経過する。最近は滅多に聴くことはなくなったが、ジョンの歌声を聴くと何だかとても悲しくなる。一般的には、暗殺後、平和を愛するロック・アーティストとして偶像化されてしまった感が否めないが、あくまでそれはジョン・レノンという人間の一面に過ぎない。
幼い頃に父親が家出をし、交通事故で母親まで亡くした彼にとって、その精神的ダメージは相当なようで、感情の起伏はとても激しく、時にはアルコールにはまり、時にはドラッグにはまり、そして女性関係でも様々なトラブルを起こしたようだ(そういえばベートーヴェンも幼い頃から父親の虐待を受け、彼の創作力の源泉は過去のそういう「苦悩」から生じているといわれている。人間のクリエイティヴィティというのはやはり「負(マイナス)」の体験から湧き出ずるものなのかもしれない)。

そういう過去をもつジョンにとっておそらくヨーコの包容力というものが最後の砦だったのだろう。ビートルズ在籍時に出会った二人は急速に接近し、必然だったかのように結婚した。それ以降はどこに行くのも何をするのも基本的に二人一緒。ある意味、ビートルズ解散の引き金になったヨーコの存在を疎ましく思うファンも決して少なくなかった。そういう厳しい世間の目を忍びながらもジョン&ヨーコは音楽以外にも様々な活動をした。ベッド・インと称する「平和運動」もその一環。彼の歌った「Imagine」や「Happy Christmas(War Is Over)」などは明らかにジョンのそういう側面を表すクリスマスの今頃にぴったりの名曲である。

天国なんかないと想像してごらん
その気になればたやすいこと
僕たちの足元に地獄はなく
頭上にあるのは空だけ
みんなが今日のために生きていると思ってごらん

国なんかないと想像してごらん
むずかしいことじゃない
殺し合いのもともなくなり
宗教もなくなり
みんなが平和な人生を送っていると思ってごらん

財産なんかないと想像してごらん
君にできるかな
欲張りや飢えの必要もなく人間は皆兄弟
みんなが全世界を分かち合っていると思ってごらん

人は僕を空想家だと言うかもしれない
けれどもそれは僕一人じゃない
いつの日か君たちも僕たちの仲間になって
世界が一つになったらいいと思う

「歓喜の歌」に通ずる感動的な詩である。音楽も素晴らしい。しかし、あえていうならば「平和主義者」としてのジョン以上に人間としてのジョン・レノンを赤裸々に表現するジョンの方が僕はもっと好きである。

John Lennon:Cold Turkey

ベスト・アルバム「ジョンの軌跡(シェイブド・フィッシュ)」所収の名曲。タイトルの「Cold Turkey」は麻薬の禁断症状として出る鳥肌を指すスラング。神でない人間としてのジョンの苦しみや叫びを激しく表現している。こういうジョンを聴き、そして「Imagine」のジョンを聴かないと等身大のジョン・レノンには出逢えない。

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