ヴェルヴェット・アンダーグラウンドは基本的に、詩人からやるせないほど頽廃的な声を持ったソングライターへと転向したルー・リードと、ラ=モンテ・ヤングの永久音楽の劇場でドローンを弾いたヴィオラ奏者のジョン・ケイルのあいだの、音楽上の対話という形をとっていた。
~アレックス・ロス著/柿沼敏江訳「20世紀を語る音楽2」(みすず書房)P534-535
最初のアルバムからさらに進化を遂げたのが不滅の、しかし商業的には決して人気があるとはいえなかったセカンド・アルバムである。それこそポップ・ミュージックと前衛の橋渡し的役割を持った真に芸術的なロック・アルバムだと今僕は思う。
のちに、ドローンが分裂して、微分音による電気的—クセナキス的なノイズの嵐に変容すると、リードは「クレージーな音を出す政治家たち」や「山のように積まれた死体」の世界を軽蔑に満ちた悲しみの目で見回す。《サージェント・ペッパーズ》のリリースの3ヵ月前に、ヴェルヴェット・アンダーグラウンドは、ロックと前衛のギャップを埋めていた。
~同上書P536
・The Velvet Underground:White Light / White Heat (1968)
Personnel
Lou Reed (vocals, lead guitar, piano)
John Cale (vocals, electric viola, Vox Continental organ, bass guitar, medical sound effects)
Sterling Morrison (guitar, bass guitar, vocals, medical sound effects)
Maureen Tucker (percussion, drums)
ヴェルヴェッツの前衛が、暴力的抒情(?)が実に心地良い。
アルバムの劈頭を飾る”White Light / White Heat”と掉尾に鎮座する”Sister Ray”。
いずれもが60年代末の、混乱の世相に対峙する、世界を揶揄する究極のポップ・アルバム!
ここにこそ二人の天才の「音楽上の対話」というロックの至芸が刻印されていると僕は思う。
ヴェルヴェット・アンダーグラウンドでの実績はもちろん誇りだよ。でも、失望も大きかった。僕には常に音楽のアイディアがたくさんある。あの頃も、今もね。だけど、ヴェルヴェッツではその可能性を生かしきれなかった。ルーをはじめメンバーとの間で、会話がまったく成立しなかったからね。もっとレコードをつくれたし、パフォーマンスもできたはずなのに、あのバンドではまったくダメだった。だから、さらに音楽の旅を続けなくてはいけなくなった。
(ジョン・ケイル)
~Blue Note Tokyoの2016年のインタビュー記事から
後にケイルはそう語った。
リードもケイルも個性が強過ぎた。
しかし、そういう二人が出会い、ぶつかったお蔭でできたアルバムがヴェルヴェッツのファーストであり、セカンドだった。それで十分だったと思う。
セカンド・アルバムは60年近く経った今もなお新しい。