Carpenters “From The Top” (1991)

守破離。
あらゆる音楽イディオムを吸収し、独自の世界を築き上げたカーペンターズは、カレンの死により終焉を迎えた。そして永遠になった。
「カーペンターズ大全集」(”From The Top”)。

・Carpenters:From The Top (1991)

彼らのキャリアは、デューク・エリントンから始まった。

ザ・リチャード・カーペンター・トリオは当時ハイスクールの学生だったカレンがドラムスを、そして大学に通っていた友人ウェス・ジェイコブスがベースとチューバを担当し1965年の夏に結成されました。このデューク・エリントン作のスタンダード曲は私がトリオのためにアレンジした最初の曲のひとつです。
“Caravan”(1965)

リチャードによってシンプルにアレンジされた”Caravan”のセンスが光る。

1968年の中頃に“スペクトラム”は解散。カレンと私はすべてのヴォーカルを自分達だけで録音することにし、いろいろ考えあぐねた末にグループ名をカーペンターズとしました。
“Don’t Be Afraid”(1968)

デビューのきっかけとなった、ハーブ・アルパートに渡されたデモ・テープ中の1曲がこの曲だ。そして、レノン/マッカートニーによる”Good Night”(1969)の、いかにもカーペンターズらしい清楚さに感動し、同じくレノン/マッカートニーによる”Ticket To Ride”(1969)の、リチャードの閃きによって名バラードとして生まれ変わった歌に感激する。

あっという間に頂点に達するカーペンターズの、キャリアのクライマックスを形成するアルバム「スーパースター」からアルバム「ナウ&ゼン」までの生命力!
すべてはリチャードの先見の成せる業。

3作目のアルバムを制作していたある日の深夜、偶然当時さほど知られていなかったベット・ミドラーがテレビ番組「トゥナイト・ショウ」にゲスト出演し、この曲を歌っているのを目にしました。ヒット性があり、カレンが歌うのに自然な曲だと感じました。
“Superstar”

ベットのひねりに対して、よりストレートで自然体のカレンの歌にこちらがオリジナルではないかと思うくらい。
そして、名曲「トップ・オブ・ワールド」にまつわるエピソードがまた素直で良い。

私はこのとてもポピュラーな楽曲のヒット・ポテンシャルを見誤っていたことを認めなければなりません。オリジナルのレコーディングを完了した後、私達はこの曲を単に好感の持てる“アルバム・カット”としか見ていなかったのです。・・・この機を逃すほど“幼くなかった私達”は、私達のヴァージョン(いくつかの手直しと新たなリード・ヴォーカルとリミックスをし)を1973年暮れにリリースしました。
“Top of the World”

もちろん名アルバム「ナウ&ゼン」については何も言うことがない。
カレン・カーペンターの歌唱力、すべてを感化する力に言葉を失うのである(どんな明るい歌にも哀感があり、まるでモーツァルトのようだ)。

中でも、個人的には“Yesterday Once More”。

歴史は進む。
1976年の「青春の輝き」はカレンが自分たちの歌で最も気に入っていたものだったらしい。

私達がレコーディングした中でも、カレンが最も気に入っていた曲で、誰もが実際のチャート・アクション(最高位25位)よりもっと上位に行くと期待していた曲です。
“I Need To Be In Love”

さらに、バッハの平均律クラヴィーア曲集第1巻から前奏曲第2番を引用し、よりクラシカルにアレンジしたコール・ポーター作の「フロム・ディス・モーメント・オン」はロンドンでのライヴから採られたものだ。
“From This Moment On”

またまた、48声のコーラスが1984年に付加されたグノー/バッハの「アヴェ・マリア」も別格の美しさ。
“Ave Maria”

年齢を重ねるにつれカレンの歌は一層の深みを増して行く。その分、ポピュラリティは後退するが、音楽の普遍性は確固としたものになっていったように思える。最後の録音になった「ナウ」が哀しい。

この録音は1982年の4月のもので、これがカレンにとって最後のレコーディング・セッションとなってしまいました。ここで聴かれる完全無比な歌唱は、バックの演奏の録音中にミュージシャン達に曲に慣れてもらうために録った“仮唄”です。
“Now”

And now, now
Now when I wake there’s someone home
I’ll never face the nights alone
You gave me the courage I need to win
To open my heart and to let you in
And I never really knew how until now
No, I never really knew how until now

カレンのいない今、なんだか涙がこぼれる。
1983年2月4日、カレンは使命を終えて、天に還った。

わが霊のなかより
緑もえいで
なにごとしなけれど
懺悔の涙せきあぐる
しづかに土を掘りいでて
ざんげの涙せきあぐる

「抒情小曲集」から「小景異情」その四
室生犀星「抒情小曲集・愛の詩集」(講談社文芸文庫)P34

天才はいつのときでも魂のそこから叫びをあげる。
古今東西、それは変わりない。

太字の楽曲解説はすべてリチャード・カーペンターによる。

カーペンターズを聴いて思ふ つまづいたおかげで つまづいたおかげで

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