AI技術でカラー化されたフルトヴェングラーの映像。
これまで幾度も観てきたものが、カラーになるだけで驚くほどリアル感が増す。
ここにある活気、躍動、そういうものがはっきり目に見えるようだ。人間にとって視覚情報がどれほど大事か、つくづく思う。
ハーケンクロイツの下で「マイスタージンガー」前奏曲を、まるでとり憑かれたように指揮する有名な映像も、果たして巨匠が、戦時下、ナチス・ドイツで指揮していたその事実を強調するようであり、ワーグナーの音楽も一層先鋭化されたものに(気のせいか)感じてしまう。
シューベルトの「未完成」交響曲のリハーサルも、冒頭のほんの少しだけのものだが、仄暗い浪漫に微かな光が差すようで、実に美しい。
歌劇「ドン・ジョヴァンニ」序曲は、ザルツブルク音楽祭での最晩年の巨匠の姿をとらえるが、どうやら録音に合わせて映像を後撮りしたもののようで、少々環境を削ぐのは事実。
(その事実を知る以前から妙に違和感があった映像だった)
なるほど、くり返し何度も観たヒトラー生誕前夜祭における「第九」のフィナーレも熱気ある、驚くべき演奏として生まれ変わるようだ。
極めつけはブラームスの交響曲第4番終楽章パッサカリアの後半部。
前代未聞の(?)、うねるフルトヴェングラーの真骨頂たる超絶名演奏。フルトヴェングラーの遺産の中で随一のものだと個人的に思う。
今年も残すところ一日。
皆様、ありがとうございました。