各プレーヤーの技術レベルはお墨付き。
アンサンブルも屈指のもの。
抜群のセンスで音楽が奏でられるが、破壊力満点、終始鬼気迫る印象を与えるのは指揮者の力量なのかどうなのか。(アンドリス・ネルソンスのそれとは対極にあろう)
・ショスタコーヴィチ:交響曲第8番ハ短調作品65(1943)
テオドール・クルレンツィス指揮南西ドイツ放送(SWR)交響楽団(2023.5.10Live)
第1楽章アダージョ―アレグロ・ノン・トロッポの情念滴る弦楽器群の様子は、泣きのショスタコーヴィチそのもの。
音楽は生き物だ。指揮者と奏者が真のつながりを回復し、心から音楽を成せば、途轍もない名演奏が生まれるのだということがわかる。
第2楽章アレグレットにおける特に木管群の素晴らしさ。
そして、第3楽章アレグロ・ノン・トロッポの金管群の咆哮に僕は感激し、打楽器群との見事な掛け合いに感心する。(ショスタコーヴィチの天才!)
さらにクライマックスを形成する、ショスタコーヴィチの本懐である第4楽章ラルゴから音楽はますます深遠に、聴く者の魂を抉る。呼吸をするのも忘れるくらいの緊迫感は牧歌たる終楽章アレグレットにも引き継がれ、オーケストラは大いに歌う。同時にクルレンツィスの音楽への陶酔が手に取るようにわかるのだ。
大袈裟な言い方だけれど、これぞ狂気の名演奏。