近代から現代にかけてのフランス音楽の礎を築いたのはフォーレ、ドビュッシー、ラヴェルの3人である。作風は三者三様でいずれも天才の名に値する作曲家なのだが、ドビュッシーに関しては一部の楽曲を除いてどうも好きになれない。というより、「理解できない」、「心に染みてこない」と言った方が正確かもしれない(あくまで僕にとってはということだが)。ほぼ同時期に活躍した同年代のラヴェルに関しては随分いろいろな楽曲を耳にし、それなりに「聴き込んだ時期」もあった。とはいえ、上記3人の中で最も僕の好みに合うのが間違いなくガブリエル・フォーレその人である。「神の言葉を伝える」天使ガブリエルの名を持ったこの天才の音楽は地味であるがとても柔らかく静かで、心を鎮めたい時に聴くととても耳に心地よい。
フォーレ:劇音楽「ペレアスとメリザンド」作品80
ミシェル・プラッソン指揮トゥールーズ・カピトール国立管弦楽団
フレデリカ・フォン・シュターデ(メゾソプラノ)
「青い鳥」で有名な劇作家モーリス・メーテルランクの書いた戯曲のための音楽。同じ題材でドビュッシーがオペラを、シェーンベルクが管弦楽曲を、そしてシベリウスが劇付随音楽を書いている。いずれも大作曲家の名に恥じない傑作、名作揃いである。
劇のあらすじは、
狩で森に迷い込んだ王子ゴローは、泉のそばで泣いているメリザンドを見つけ妻としたが、弟のペレアスもメリザンドにひかれ、二人きりの逢瀬を繰り返していた。苛立つゴローはメリザンドを執拗に責める。やがて二人の密会が露呈し、ペレアスはゴローに殺される。メリザンドはペレアスの子供を産んで死ぬ。
というもの。
現代も男女の愛憎絡みの悲惨な殺傷事件は絶えないが、人類誕生以来「男と女」の関係ほどある意味不可解で、答えの出ないものはないかもしれない。そもそも「男」と「女」は別の生物なのだから、お互いが相手を敬い、理解しようと努力することと、承認しながら受容するしか道はないのであり、それを学ぶことがある意味人間がこの世に生を享ける最大の理由なのかもしれない。人生山あり谷あり、男女の関係も山あり谷あり。その「谷」を楽しむだけの余裕が必要なのである。
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