外の空気はやけに重い。こういう暑苦しいときは「音の少ない」地味な音楽を聴いてリラックスするのが効果的である。何も考えずにぼーっとして聴くことができ、耳の邪魔にならない楽曲。人それぞれ好みはあるだろうが、僕にとって魂を癒してくれるのは「中世・ルネサンス期」の音楽。
ヨハンネス・オケゲムの「死者のためのミサ曲」。15世紀フランドル派の初期を飾る作曲家の現存する最古のレクイエム。
近代以前の人々にとって、「死」は常に日常的な出来事だった。天変地異や疫病で簡単に多くの人間が命を失い、出産によって母親が亡くなることも多く、産まれた子供の多くは早死にしてしまう。そんな人々にとって「死」は常に隣にあるものであった。
ヨハンネス・オケゲム:レクイエム
ポール・ヒリアー指揮ザ・ヒリヤード・アンサンブル
谷川慕いて鹿のあえぐごとく、
神よ、わが魂御身をこがれる。
わが魂生ける神を渇望せり。
われいつ来たりて、わが神のみ顔を仰ぎまつらん。
わが涙、昼も夜もわが糧なりき、
ひねもす、「汝の神いずこにおわさん」といわるる限り。
どちらかと言えば地味な音楽だが、それだけに、当時の人々の深く静かな祈りが伝わって来るよう。
「聴く」は「効く」に通じる。
※CDは廃盤のようだ。
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