知人に岡本太郎を絶賛する男がいる。彼の創造する書籍のほとんどを読み尽くしているらしい。
岡本太郎といえば何十年も昔「芸術は爆発だ!」と叫んでいたテレビ・コマーシャルを思い出す。彼のいう「爆発」とはいわゆる「単なる火薬などの爆発」ではなく、どうやら「ぱーっと開くこと」つまり「魂の解放」ということらしい。
以前の日記にも書いたと思うが、ベートーヴェンの永遠のテーマは「苦悩から解放へ」ということであった。第5交響曲はそのことを音楽で表現した最高の形であるといえる。
一方、最近「のだめカンタービレ」というドラマやアニメで有名になった第7交響曲。今日はこの曲を聴いてみよう。
ベートーヴェン:交響曲第7番イ長調作品92
ヴィルヘルム・フルトヴェングラー指揮ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団
人類至宝の名盤である。ベートーヴェンの交響曲は基本的にフルトヴェングラー盤を選べばまずは間違いない。ただし、半世紀以上も前の録音ゆえ音質は期待できない。しかし、その音の悪さを超え「表現される音楽」は神懸かっている。
そのフルトヴェングラー盤が訴えかけるもの、それが先述の太郎の言葉に通じると僕には感じられる。
第1楽章 オーケストラの総奏による一撃からすでに「爆発」つまり「解放」が始まる
第2楽章 自らを解き放ったあとに訪れる「平穏」そして「空(くう)」
第3楽章 「空(くう)」による「歓喜」
そして、ワーグナーが「舞踏の権化」と呼んだ終楽章。これは「歓喜」に次ぐ「次元昇華」、新たな「解放」が始まる。
そう、この曲は「解放」から「解放」へと循環し、スパイラル的にアセンションする「魂の音楽」なのである。
6月9日(土)かつしかシンフォニーヒルズのコンサートでは奇しくもこの曲が演奏される。指揮者のタマーシュ・ヴァーシャリはどのような演奏をするのか。楽しみである。
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