
電化マイルス端境期の奇跡の”Live-Evil”。
マイルスのこのアルバムについては、かつて僕の思いを書いた。
半世紀以上前の、天才のチャレンジは今もって鮮烈。数多のアーティストに与えた衝撃。
そして、アルバムに参加する錚々たる面々。並んだ名前を見るだけで震え上がるくらい。
Miles Davis “Live-Evil” (1971)を聴いて思ふ 世界は混沌と調和の折衷の中にあり、混沌は調和であり、また調和は混沌でもある、そのことを見事に彼らは音化した。完璧だと思う。
キース・ジャレットとチック・コリアのハーモニーの進歩がなければ、マイルス・デイヴィスのモールス信号的演奏は孤独に空中に漂い、デイヴ・ホランドのロックのようなベース・ラインは時として大胆すぎるように思えただろう。彼らは、一方ではマイルス・デイヴィスを音楽の根幹にしっかりと根付かせ、他方では破壊的な効果と遠くから響くハーモニーでデイヴ・ホランドの地を這うロックのグルーヴを揺さぶっている。キース・ジャレット自身はいまでも音の探究を続けており、そのハーモニーと形式の理解力によって、マイルス・デイヴィスが彼を仲間に引き入れた目的、つまり伝統からの創出を体現している。
~ヴォルフガング・サンドナー/稲岡邦彌訳「キース・ジャレットの真実 ジャズピアノの歴史を変えた即興演奏とその人生」(DU BOOKS)P68-69
何とうまい解釈であろうか。
いかにもキース・ジャレットの立ち位置が見事に表現されている。
キース、チック、そしてハービーとジョーという稀代のキーボーディストたちがマイルスに及ぼした影響は限りなく大きい。
・Miles Davis:Live-Evil (1970.2.6&6.3-4録音, 1970.12.19Live)
Personnel
Miles Davis (trumpet)
Gary Bartz, Steve Grossman, Wayne Shorter (saxophone)
John McLaughlin (guitar)
Keith Jarrett, Chick Corea, Herbie Hancock, Joe Zawinul (electric piano,organ)
Michael Henderson, Dave Holland, Ron Carter (bass)
Khalil Balakridhna (electric sitar)
Jack DeJohnette, Billy Cobham (drums)
Airto Moreira (percussion)
Hermeto Pascoal (drums, whistling, vocals, electric piano)
2枚組それぞれ冒頭の楽曲が自身の名前のアナグラムであることもマイルスの冗談とも思えない、本気の破壊的創造の精神を顕すようだ。
(マイルスにジャンルという概念はない。あるのは常に革新という言葉のみ)
(それゆえ、彼はメンバーにも常に斬新な何かを求めた)
たとえば〈ホワット・アイ・セイ〉では、ベースとドラムに支えられたジャレットがマイルス・デイヴィスのために素晴らしいファンクの土台を築く。
〈リトル・チャーチ〉では、マイルス・デイヴィスは4人のピアニスト(エルメート・パスコアール、キース・ジャレット、ハービー・ハンコック、チック・コリア)を束ね、もはや何の区別も許されない、一見非現実的な音のバンドを形成する。ピアニストの単なる浪費は、むしろわずかな音響効果のためだと思うかもしれない。しかし、これもマイルス・デイヴィスの一部であり、〈イナモラータ〉のベース・リフのストイックな主張のように、リズムが徐々に崩れ、俳優のコンラッド・ロバーツがマイルス・デイヴィス自身によるものだと思われる奇妙なトーン・ポエムを朗読する前に、再び詩的にこの録音のミステリアスなムードを強調している。
~同上書P69-70
確かに最後の「イナモラータ・アンド・ナレーション」は強烈だ。
