Steve Hackett再発見!

イギリスは数度訪問したことがある程度。一度はコッツウォルズを中心に田園地帯を回ったこともある。あれは素敵な体験だった。日本の田舎とはまた違って、いかにもお化けの出てきそうな古城だったり、広々と拡がる山や谷の景色と澄んだ美味しい空気を堪能し、イギリス料理は基本的に美味くないものと決めつけていたが、その時は意外にも美味しい料理に舌鼓を打ち、幸せに感じるひと時を過ごしたことが走馬灯のように蘇ってきた(もう15年も前のこと)。

ここのところジェネシス・ファミリーのアルバムを立て続けに聴いているが、ピーター・ガブリエルはもちろんのこと、マイク・ラザフォードやトニー・バンクスの作品にも英国風の実にどんよりとした曇り空の雰囲気が立ち込めており、本質的に性格の暗い僕のツボにぴったりとはまってしまうところが怖い(笑)。中でも秀逸で、見直しているのがスティーヴ・ハケットその人。”Nursery Cryme”から”Second Out”までの作品に参加しているところから考えると、彼が初期Genesisのある意味キーマンであり、まさに彼のギター・ワークがバンドにとってなくてはならないものだったことが如実にわかる。
とはいえ、やっぱりジェネシス脱退後のハケットの世界こそが真骨頂。特に、2枚目の”Please Don’t Touch”は涙が出るほど素晴らしい。

Steve Hackett:Please Don’t Touch

「ナルニア国物語」第1章『ライオンと魔女』を基に書かれた“Narnia”のイントロからもう既にSteve Hackettのメルヘンの世界。

“Narnia”
Things they taught you at school(かつて学校で教えられたことは)
Can sometimes disappear(時々どこかに消えてしまうもの)
Why do you disbelieve(どうして僕の言うことが)
The things I said were true(本当だと信じてくれないの?)
Of a land nothing planned(何一つ計画されない国の話)
It just happens(すべてが偶然で)
Girls and boys who shout come out to play(少年少女が声を張り上げて遊ぶ)

転調を駆使したそれぞれの楽曲の流れは完璧で、突如として変化する音色やメロディの美しさは少々スノビッシュな側面も顔を見せるものの、そのあたりは黒人アーティストの一人者であるRichie Havensの独特の声質と見事なバランスを保っており、Havensがヴォーカルをとる”How Can I?”と”Icarus Ascending”がこのアルバムの頂点であると僕は確信する。それと、紙ジャケ復刻盤にはボーナス・トラックが3曲付いており、これがまた涙もの。”Narnia”のJohn Perryヴォーカル・バージョンに、”Land Of A Thousand Autumns / Please Don’t Touch”のライヴ・バージョンなど。実演でもスタジオ・ワークを完璧に再現しているところがハケットのテクニックの見事さを表しており、観客の熱気まで刻印されている点からするとこちらの実況録音の方がジェネシス~ハケットらしくて良いかも。こういう録音を聴くと、ジェネシスはライブ・バンドだったということがあらためてわかる。


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