生きているんだ!!

新年最初の「早わかりクラシック音楽入門講座」のテーマは、ヴェルディとワーグナー。ともに1813年生まれの、当時のヨーロッパを二分したオペラの巨匠だが、その性格は異質。しかしながら、老ヴェルディが晩年にアリゴ・ボーイトの台本をもとに作曲した2つの傑作「オテロ」と「ファルスタッフ」に至り、いわゆるアリアなどを廃止し、ワーグナーが生涯追い求めた音楽と舞台とすべてをひとつにする総合芸術に限りなく接近したという意味においてはいずれの天才も志向していた先はまったく同じだったんだと考えられる。ヴェルディは27作の歌劇を生み出し、ワーグナーは、バイロイト音楽祭の舞台にかけられるものだけでも10作の作品があるのだから、それらの一つ一つを完全にものにしてゆくというのは至難の技で、それこそある時期相当にのめり込みながら、一生かけて追究してゆかなければならない代物たちなんだとあらためて考える。
それに、時間と労力をかなり消耗するという意味では、やっぱりオペラなどは10代から20代の初め頃に目一杯聴き尽くしておくことが大事とも思うし・・・。

とはいえ、土曜日の講座では2人の大作曲家を簡潔に紹介せねばならないということで、帰京するなりいくつか映像を観ることにした。まずは無難に「椿姫」あたりだろうかとも思ったが、ここは「アイーダ」。

ヴェルディ:歌劇「アイーダ」(Blu-ray Disc)
ヴィオレッタ・ウルマーナ(アイーダ)
ロベルト・アラーニャ(ラダメス)
イルディコ・コムロシ(アムネリス)
ジョルジオ・ジュゼッピーニ(ランフィス)
カルロ・グェルフィ(アモナスロ)ほか
リッカルド・シャイー指揮ミラノ・スカラ座管弦楽団&合唱団
演出・舞台美術:フランコ・ゼッフィレッリ(2006.12Liveミラノ、スカラ座)

バブルの時のアレーナ・ディ・ヴェローナ東京公演の時以上に華麗で豪華な舞台!久しぶりに映像で「アイーダ」を観たが、いや、これは本当に素晴らしい。「オペラ音声だけ」主義者(笑)の僕も2012年から考えを改めようと思わせられる出来栄え。もちろん音楽も歌手も納得のパフォーマンスを聴衆に届けてくれているからこそのもの。素敵だ。
ちなみに、この公演、アラーニャが観客からのブーイングに怒って途中退場したというエピソードで有名なものらしい。いろいろとハプニングが起こるというのも本場ヨーロッパのオペラの舞台ならでは。歌手といえども聖人君子でないゆえ喜怒哀楽は当然ある。歌手と観客との駆け引き・・・、何て面白いことか。そういうことも含めて「オペラを観る(聴く)醍醐味」と考えれば、クラシック音楽を精通することに一層の興味が湧くというもの。今度の受講生の方々にそういう見方(舞台裏―つまり映画でいうところのメイキングもの)も薦めてみようか・・・。

ちなみに、肝心の「アイーダ」。数あるヴェルディ作品の中で僕が最も好むもの。全編を通じて有名なアリアやメロディが散りばめられているということも理由の一つだが、何より作曲家の生気溢れるダイナミズムが、そう、「生きているんだ!!」というエネルギーが感じられるところが最大の理由。特にこのディスクは、スカラ座という箱の中で、シャイーという指揮者を筆頭に、それこそイタリアを代表する歌手たちに縦横無尽にかつ完璧に料理されているというのが魅力。それに、オペラの場合、演出がとにもかくにも命だが、ゼッフィレッリのそれはもう最高。ついつい時間を忘れて魅入ってしまった・・・。

はて、ワーグナーについてはどうしたものか・・・。


2 COMMENTS

雅之

>「オペラ音声だけ」

本場陽気なイタリア人100人に感想を訊いたら何と答えるでしょうね!
オペラとサッカー観戦は似ているという側面もありますしね。
ナマでのハプニングも楽しみの内でしょうね。

ご紹介のBlu-ray Disc、良さそうですね。欲しくなりました。

ただし、シャイーという超一流指揮者は、コンサートでは何ども接していますが、いまいちナマでは出来にムラがあるように感じるのですが・・・(それもいいではないですか、人間だもの)。

しかし皆で誰かのお家でワイワイ楽しくオペラ鑑賞する場合でも、
CDで音だけで想像するよりも、今は絶対Blu-ray Discでしょう。

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岡本 浩和

>雅之様
おはようございます。
イタリア人には笑われちゃうでしょうね(苦笑)。

>しかし皆で誰かのお家でワイワイ楽しくオペラ鑑賞する場合でも、
CDで音だけで想像するよりも、今は絶対Blu-ray Discでしょう。

ですね。しかし一方で、おしゃべりをメインにするなら意外に音だけもありだと僕は思います。
映像があるとどうしてもそっちに集中してしまいますから。

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