ヴァイオリン両翼配置のこと

午前中、明日の「早わかりクラシック音楽入門講座」の準備をしていて、テーマが『編成で聴くクラシック』ということもあり、オーケストラ曲を採り上げる時に、せっかくだから楽器配置の違いや作曲家の意図を知っていただこうと聴き比べでもしてみようかと考えた。妥当なところはチャイコフスキーの「悲愴」交響曲の終楽章の比較だろうと手持ちの音盤をいろいろと調べてみたが適当なもの(つまり、聴いてわかりやすいもの)が意外に見つからない。そもそもどの指揮者が両翼配置で、どの指揮者が一般的(ストコフスキーが考案した)配置なのか、ほとんど意識して聴いていなかったものだから咄嗟に出て来ない。しかし、少なくともレニングラード・フィルは間違いなく両翼だろうと所有しているムラヴィンスキーの音盤をすべて聴いてみたが、どうももうひとつよくわからない。オーソドックスな名盤である1960年のグラモフォン盤はどうやら当時の西側のプロデューサーからの要請で通常配置に変更しての録音だったらしいから該当せず。ならば、Altusからリリースされた1975年の来日ライブも確認せねばとかけてみたが如何せん音が悪くてピンとこない。ではと、久しぶりにビクターから出た晩年(1982年)の実況録音盤を聴いてみたが、僕の耳が悪いからなのか、何だかあまりその効果が感じ取れない(録音のせいもあるのかな)。

ところで、ひょっとしたらこの音盤十数年ぶりの対面かもしれない、ということで、・・・
せっかくだから最初からと聴いてみたところ、宿題そっちのけで完全にはまってしまった。第1楽章から老巨匠の演奏とは思えない鮮烈な響きと戦車のような重量級の音の塊が両耳をつんざく。

チャイコフスキー:
・交響曲第6番ロ短調「悲愴」作品74(1982.10.17Live)
・幻想曲「フランチェスカ・ダ・リミニ」作品32(1983.3.19Live)
エフゲニー・ムラヴィンスキー指揮レニングラード・フィルハーモニー管弦楽団

チャイコフスキーの作曲センスは抜群。わかっていても「悲愴」はやはり超名曲だと再確認。もはやほとんど聴くことはないだろうと思っていても聴き出したら止まらない。それが名演奏なら尚更。
さてさて、そうこうする内に件の終楽章。ちゃんとしっかり聴くと確かに両翼配置っぽい。(しかし、入門者にこの部分だけ聴いていただいてわかってもらえるだろうか・・・。それがちょっと心配。そのあたりは明日現場で確認しよう・・・)それにしても、作曲家は音の立体的なつながりやいわゆるステレオ効果まで計算して音楽を創造しているのだから大したものだとあらためて実感。

ちなみに、僕がクラシック音楽を聴き始めた高校生の頃、ムラヴィンスキーは存命だった。それどころか当時来日の予定があったこともはっきり覚えている。本人の急病とかでキャンセルになってしまったけど。もっとも仮に来日していたとしても当時の僕のアンテナには引っかからないから間違いなく実演には触れ得ていない(笑)。
それがもう既に30年近い昔の話だと。ムラヴィンスキーも過去の巨匠ということか・・・。

※「フランチェスカ・ダ・リミニ」は凍りつくような寒気のする凄演!!(ムラヴィンスキーを聴く時の感覚はツェッペリンを聴く時のそれに似ている)

3 COMMENTS

雅之

おはようございます。

悲愴の終楽章で両翼配置が解りやすいのは、私の所有CDではトスカニーニ晩年のステレオ録音やシノーポリ盤です。一般の音楽ファンに対しては、「悲愴」でムラヴィンスキーにこだわる必要はないのでは?

ところで、明日ぜひ満喫していただきたいのは、日比谷公会堂の戦時下をも想わす歴史の重みと特異な音響の魅力です。1階ではなく2階席前列席が特におすすめです。本当は14番のような極めて小編成の曲と、大編成の交響曲(7・8・10・11・12・それに同じ声楽付13番など)の金管・打楽器が突き刺さる迫力とを、両方味わっていただきたかったのですが・・・。

それでも、字幕付き実演で聴くと、14番の理解はうんと深まりますよ。

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岡本 浩和

>雅之様
こんにちは。
なるほどシノーポリですか!
残念ながらトスカニーニ盤とあわせて持っておりませんので、とりあえず今日のところはムラヴィン盤で確認したいと思います。
あと、日比谷の件のアドバイスありがとうございます。「蝶々さん」も録画予約しました!

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