ミューザ川崎オープニング・コンサート「千人の交響曲」

すみだ学習ガーデンさくらカレッジ「早わかりクラシック音楽入門講座(全12回)」の最終回を無事終えた。ピアニスト愛知とし子に登場いただいて、爆裂トーク絶好調でほぼ2時間バロックから20世紀の音楽まで全10曲を披露してもらった。
個人的にはこの半年で諸々劇的な変化があったが、これだけお客様に喜んでいただけたならやって良かったとつくづく思う。
ともかくピアノはもちろんのことコンサートなど行ったことがないという入門者の方々がやはり多く、それでいてクラシック音楽について勉強しようと前向き一生懸命の紳士淑女ばかりなわけで、本日も冒頭にまずはコンサートでのマナーについてお話しさせていただいたが、そういうこともしっかりと守っていただき、皆様のお行儀の良さに(笑)吃驚仰天、やっぱり何歳になっても向上心は忘れちゃいけないと思った次第。
半年間ありがとうございました。引き続き4月からの第2期にもご参加いただけるという方も何名かいらっしゃったので一層気を引き締めてより良いものを作っていこうと決意を新たにした。

鬱陶しい雨模様を吹き飛ばし、今のやる気全開の気分をより刺激する音楽でも聴いてみるかとマーラーの通称「千人の交響曲」を。それもミューザ川崎(昨年の震災で何と天井が落ちたというあのホール)の記念すべき杮落しの実況録音盤。実はこのコンサートに長年の友人が合唱で参加しており、当時記念に1枚いただいたが、そんなことは忘却の彼方で、つい先日棚の奥にあるのを発見し、ようやく本日封を切って聴き始めたというもの。そう、まさに今、第1部の讃歌「あらわれたまえ、創造の主、聖霊よ」のラストの部分「主なる父に栄光あれ」の合唱が高らかに歌われる・・・。

ミューザ川崎オープニング・コンサート
マーラー:交響曲第8番変ホ長調「千人の交響曲」
佐藤しのぶ、大倉由紀枝、天羽明恵(ソプラノ)
寺谷千枝子、菅有実子(メゾ・ソプラノ)
錦織健(テノール)
大島幾雄(バリトン)
若林勉(バス)
松居直美(オルガン)
堤俊輔(副指揮・合唱指揮)
川崎市合唱連盟、東響コーラス、昭和音大合唱団、洗足学園音大合唱団(合唱)
ゆりがおか児童合唱団、東京少年少女合唱隊(児童合唱)
秋山和慶指揮東京交響楽団(2004.7.1Live、ミューザ川崎シンフォニーホール)(非売品)

指揮者の金聖響氏はマーラーの第8交響曲について次のように語る。
「この『第8番』の音楽自体は、まったくワカリヤスイ音楽ということができます。
誤解を怖れずいってしまうなら、僕の解説を聞いてもらう必要などまったくなく、また、いろんな解説文を読んでもらう必要もなく、ただ黙って音楽に耳を傾ければ、全身が震えるような感動で満たされる・・・といった類のきわめてワカリヤスイ音楽です。」
金聖響+玉木正之「マーラーの交響曲」

もちろん歌われている内容や作曲の背景など知っているに越したことはないが、それでも確かにこの言葉には説得力がある。実演で聴くと本当に驚天動地、腰を抜かすほど感激するのは間違いない。この時のコンサート、当然先の彼から誘われていたが、当時は仕事の関係でどうしても伺えなかった。この録音を聴くにつれ悔しさが募る。
コンサートなどは一世一代で、しかもこの時のような「記念イベント」の場合、本当にその時を経験しないとどうにも真実は体感できない。ともかく行きたいと思うコンサートは躊躇なく絶対に足を運ぶべきだと心底思う(よくよくプログラムを見てみると何と豪華な出演者たちかと目を疑うほど。こんなコンサートはなかなかない)。

ところで、本日の墨田区でのコンサートでは後半にパッヘルベルのカノンが演奏された。その際、東日本大震災から1年ということで復興の意を込めたスライドをスクリーンに投影して進めたのだが、この演出がまた良かった。
さて、外は朝から雨。昨晩は酒のせいで覚醒したのかあまり眠れなかった。合気道の早朝稽古もあったのでほとんど寝ないまま活動を始めたのでもはや相当に眠い。少しばかりやるべきことを片づけて早めに寝るとするか・・・。


3 COMMENTS

雅之

おはようございます。

>コンサートなどは一世一代で、しかもこの時のような「記念イベント」の場合、本当にその時を経験しないとどうにも真実は体感できない。

その通りですよね。
特にアマの合唱団やオケの場合、一回のコンサートのための練習などに費やした時間の多さと一回に懸ける思い入れの強さが違いますからね。

そして、もっと重要なのは、ライヴは聴衆との「関係性」が極めて大事ということ。だから、絶対に録音だけ聴いて演奏の善し悪しを判断しても、コンサート当日に起こった真実は見えてこないのです。

もう一度、あの本をオススメしておきます。きっと読まれて得るところが多いと思います。

「ミュージッキング 音楽は〈行為〉である」 クリストファー スモール (著)  野澤 豊一 , 西島 千尋 (翻訳)  水声社
http://www.amazon.co.jp/%E3%83%9F%E3%83%A5%E3%83%BC%E3%82%B8%E3%83%83%E3%82%AD%E3%83%B3%E3%82%B0%E2%80%95%E9%9F%B3%E6%A5%BD%E3%81%AF%E2%80%9C%E8%A1%8C%E7%82%BA%E2%80%9D%E3%81%A7%E3%81%82%E3%82%8B-%E3%82%AF%E3%83%AA%E3%82%B9%E3%83%88%E3%83%95%E3%82%A1%E3%83%BC-%E3%82%B9%E3%83%A2%E3%83%BC%E3%83%AB/dp/4891768266

斎藤環氏による書評より
http://book.asahi.com/reviews/reviewer/2011103000019.html

■存在を祝福し、肯定する音楽

 “音楽というモノ”は存在しない。著者は断言する。あるのはミュージッキングなのだと。それは作曲家や演奏家の専有物ではない。リスナーも、ダンサーも、ローディーも、チケットのもぎりも、およそ音楽に関わるすべての人々は、ミュージッキングに参加している。
 そう考えることで、音楽は一方的な鑑賞の対象であることをやめ、あらゆる“関係性”に開かれたパフォーマンスとなる。この視点から、とあるシンフォニー・コンサートの成立過程が詳しく検討される。そこで何が起こっているのか。
 ミュージッキングとは関係することだ、と著者は言う。それは「関係を探求し、確認し、祝う」ことなのだ。
 音楽の精神分析が難しいのはなぜか。ようやくその謎が解けた。分析において重要なのは「否定」や「否認」だ。しかし音楽には「否定」がない。そこにあるのは祝うこと、すなわち存在の肯定なのである。

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岡本 浩和

>雅之様
おはようございます。

>ライヴは聴衆との「関係性」が極めて大事ということ。

そうですよね。昨日の講座でもまさにこのことが話題になりました。
これは僕がワークショップZEROなどでテーマにしていることとまったく合致します。
もちろん合気道で追究しているのもその点で、しかも「関係性」をいかにZEROにするか(つまりバランスが取れた「和」の状態)ということが体感的に学習できる点が素晴らしいのです。

以前からご紹介いただいているこの本、毎日情報が多いのですぐに失念してしまいますが今度こそ読んでみます。
ありがとうございます。

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