カラヤン、カルショウ&デル・モナコの「オテロ」

手持無沙汰だからオペラでもと、久しぶりにマリオ・デル・モナコのオテロを聴いた。何年ぶりだろうか・・・。録音から50年以上を経ているとは思えない「作り」。人工的といわれればそれまでだけれど、ジョン・カルショウらしい芸術的「作り」にあらためて感心。
あの時代、ロング・プレイ・レコードが開発され、ステレオ録音に移行し、いよいよこれからクラシック音楽の時代到来という狼煙が上がり、レコード産業が爆発的に飛躍を遂げることになる、あの時代の(もちろん僕はまだ生まれていないけれど)、まさに未来を予見するかのような録音。おそらく大変な費用と時間とがかけられ制作されただろう一大音絵巻である。
何より映像なしでオペラの全景を聴者に想像させるパフォーマンス!
とにかく目の前に色のついた「音」が拡がる。オペラ指揮者カラヤンの面目躍如、そして天才プロデューサー、カルショウの恐るべき力量!

前作「アイーダ」から16年の歳月をかけて生み出された「オテロ」は初演の際、大変な熱狂で迎えられたという。カーテンコールでは作曲者は20回以上も呼び戻され、聴衆はハンカチや帽子を振りながら涙していたのだと。そして、終演後も感激ぶりは収まらず、翌朝になっても「ヴェルディ万歳、ヴェルディ万歳!」の叫びが轟いていたらしい。

ヴェルディ:歌劇「オテロ」
マリオ・デル・モナコ(テノール、オテロ)
レナータ・テバルディ(ソプラノ、デズデーモナ)
アルド・プロッティ(バリトン、イアーゴ)
ネロ・ロマナート(テノール、カッシオ)
フェルナンド・コレーナ(バス、ロドヴィーコ)ほか
ウィーン国立歌劇場合唱団
ウィーン少年合唱団
ヘルベルト・フォン・カラヤン指揮ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団(1961.5録音)

オテロがいよいよ狂気にとりつかれてゆく第3幕の壮絶さが堪らない。デル・モナコの迫真の演技までもが脳裏に過る。そして、急転直下の終幕・・・。冒頭のデズデーモナの「柳の歌」~「アヴェ・マリア」に至る数分はこの音盤の聴きどころのひとつ。テバルディの「歌」が沁みる。この後のオテロ登場から幕切れまでは・・・、悶絶して聴くしかなかろう・・・(笑)。
それにしてもカラヤンは上手い。ドイツ物のシンフォニーなどではほとんどピンときたためしのない指揮者だけれど、ことオペラに関しては右に出るものなし(あと、R.シュトラウスの演奏にかけても)。色彩的な音色と華麗な歌と。何より「オテロ」の真髄である人物の音での心理描写が滅法上手い。「不滅の名盤」を聴く愉しみここにあり。

ところで、今年はオペラの2大巨頭ジュゼッペ・ヴェルディとリヒャルト・ワーグナーの生誕200年の年にあたる。イタリア・オペラとドイツ・オペラを代表する巨人が同年に生まれているという音楽史の奇跡(バッハとヘンデルが同じ1685年生まれであるのと同様に)!
たまにはオペラ劇場でゆっくり鑑賞したいものだ。今年はそのチャンスに巡り合えそうかな・・・。


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