究極の美

ドストエフスキーの最高傑作「カラマーゾフの兄弟」。今夏、新訳された文庫本が何と30万近く部数を伸ばしたという。カラマーゾフ家周辺で起こる女性関係を巡っての愛憎や殺人事件を横軸に、そして全く性格の違う3兄弟による「神の存在への是非」という思想を縦軸に壮大な哲学的ドラマを織り成すこの長編小説が何ゆえ今の時代に好まれるのだろうか?
直情的だが素直な心の持ち主である長男ドミートリー、理詰めで神の不在を説く次男イヴァン、そして、ゾシマ長老に使える僧であり、神への信仰心篤い三男のアリョーシャ。如いて言うなら人間の持つ脳の三様-順番に「EQ的なるモノ」、「IQ的なるモノ」、「SQ的なるモノ」-をそれぞれ表しているのではないかと思わせる人物設定は、現代の荒廃した社会に棲む我々が直面している問題を、今こそどのように解決していくべきなのか回答してくれている「バイブル」的存在として支持されているからなのかもしれない。
とにかく一見普通のミステリー小説にも思えるこの大作は、人間の持つ「聖俗」両面を見事に描き出しており、多くの方に読んでいただきたい古典的大傑作なのである。

僕は、ラフマニノフを聴くとトルストイを思い浮かべる。一方、ドストエフスキーと聞くとスクリャービンを思い出すのだ。
晩年、神秘主義に走り、誇大妄想癖の権化となったスクリャービンも若い頃はショパンに影響を受けたとてもロマンティックなピアノ曲をたくさん残した。

スクリャービン:エチュード(練習曲)ニ短調作品8-12
ミヒャエル・ポンティ(ピアノ)

スクリャービンの数あるエチュードの中で最も有名で、最も劇的でロマンに溢れた名作がこの「作品8-12」。初めて聴いたホロヴィッツ盤でぶちのめされた(カーネギーホールでの映像は半端じゃない!)。
ちなみに、このポンティ盤は、スクリャービンのピアノ曲を全曲収録している5枚組のアルバム。それが何と2000円弱の値段で手に入る。驚愕である!

本夕の朝日新聞夕刊の「ニッポン人脈記」。
「中世ヨーロッパで音楽は天体の模倣とされ、音楽学は数学の一分野だった。自らの感性で究極の美を探す。」
バッハもスクリャービンもドストエフスキーもひょっとすると数学の一つなのかもしれない・・・。
※本日は、フョードル・ミハイロヴィチ・ドストエフスキーの誕生日である。

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