自信と客観性

camel_snow_goose.jpg人の本性は「善」であると僕は思う。罪を犯すのは「性」ではなく体験によって蓄積された「概念」だろうと。「罪を憎んで人を憎まず」。長い間セミナーに携わってきて、何千人という人たちを目の当たりにし、僕なりにそういう結論に達している。

孤独な変人画家ラヤダーの友達は野生の鳥たち。傷ついた白雁を救ったことから、少女フリースは彼と仲良くなる。どういうわけかラヤダーはフリースにだけは心を開いた。そして、最終的に二人の友情は愛へと移り変わってゆく・・・。

人は、自分の身体が不自由だと人間嫌いになることがよくあるものだが、ラヤダーは人を憎むということを知らなかった。人間でも動物でも、自然界にあるすべてのものをこよなく愛していた。その心はあわれみと理解に満ち溢れていた。身体の不自由からくる不利な条件はすでに克服はしていたが、醜さのために、せっかくの自分の好意も、人に受けつけてもらえないことだけは、どうすることもできなかった。
ラヤダーを隠遁生活に追い込んだのは、どこへいっても、自分の心から流れ出る温かさに応えてくれるものを、見つけ出すことができなかったからである。
~(「白雁物語(スノー・グース)、ポール・ギャリコ作、古沢安二郎訳」(偕成社文庫)P14

午前中から銀座、東京、表参道と移動し、先日のセミナーにご参加いただいた方と対面セッションをした。人が自信を取り戻し、素直に前に向かって進んでいる姿を見るのは喜ばしい。

Camel:The Snow Goose

Personnel
Andrew Latimer(Guitar, Flute, Vocal)
Andy Ward(Drums)
Pete Bardens(Keyboard, Vocal)
Doug Ferguson(Bass, Vocal)

ポール・ギャリコの同名小説にインスパイアされ創り上げられた70年代キャメルの傑作(最初に提唱したのはDoug Fergusonのようだ)。曲間がなく、全編インストゥルメンタルで奏されるあたりは、当時のプログレッシブ・ロック・バンドのある意味常套手段だが、イギリスのバンドらしく洗練され、初期ジェネシスのような靄がかったような音調がセンス満点。初めて聴いてからもう25年になる。いつ何時耳にしても新鮮さを失わないその音楽は、メンバー各々が十分にアイデアを消化し尽くしたアンサンブル形態がとられていたがゆえの産物だろう。さらに、当時の彼らは「自分たちの音楽性に自信を持つ」ことのみならず、「自らに客観性を持つ」という能力を兼ね備えていたともいう。

なるほど「自信」「客観性」か・・・。見事だ。


3 COMMENTS

雅之

おはようございます。
>人の本性は「善」である
「善」「悪」も、「幸福」「不幸」と同じく相対的なものであり、時代、文化、思想、宗教などにより、言葉の定義はどうにでも変化しますし、境界線などない曖昧なものですよね(だからこそ、法律、ルールが必要になる、また、そうした言葉についての見解の相違により、政治が対立する)。
「善人なほもて往生をとぐ、いはんや悪人をや」 『歎異抄』第三条
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%82%AA%E4%BA%BA%E6%AD%A3%E6%A9%9F
自分は罪を犯していない「善人」だと思っている人ほど、実は救われないものはないという、親鸞の「本音?」に、今の私は共感しています。
>「自信」と「客観性」
将棋でも囲碁でも何でもそうですが、「大局観」を養うには、この二つのバランスが肝要ですよね。「言うは易し、行うは難し」ですが・・・。
ご紹介の盤は所有しておりません。聴きやすそうなので、聴いてみたいです。なお、恥ずかしながら「白雁物語(スノー・グース)」も未読です。

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岡本 浩和

>雅之様
おはようございます。
>「悪人正機」説、なるほどですね。「善悪」という二元論的な表現がよくないのかもしれませんね。人間というもの誰しも「概念」が強いゆえ「悪人」なのかもしれません。親鸞のいうように、確かに「それを自覚した者」だけが救われるというのは正しい見方かもと思いました。同時に、僕がセミナーで提示している「自分の良いところも悪いところも自覚して受け容れることが大事だ」ということとニュアンスは近いのではとも考えました。
ということで、表現を変えたほうが良いですね。
「人の本性は「善」である」ではなく「人の本性は「一」である」です(人間論的な捉え方でなく、善も悪も陰も陽も包括して一つだと)。
>「大局観」を養うには、この二つのバランスが肝要ですよね。
何でもバランスですね。
「スノーグース」はぜひ一度聴いてみてください。

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アレグロ・コン・ブリオ~第5章 » Blog Archive » ピーター・ガブリエル&矢野顕子の朗読!!

[…] いや、もうね・・・、これは本当にすごい仕事です。 一聴、言葉が出なかった。音盤を聴くや涙が出るほど。こんな企画は「天才の為せる業」としか言いようがないが(それは僕の知る限り仙波さんをおいて他にはいない)、ネットで件の音盤のことについて何か書かれていないかと検索し、amazonのレビューに驚きと絶賛の声がいくつか書かれているのを見て、首肯した。何せポール・ギャリコ(あの「スノー・グース」の作者)の物語を矢野顕子とピーター・ガブリエルが朗読し、音楽は井上鑑+デイヴィッド・ローズなのである。この音盤、どうやら今では簡単に手に入らなさそうだが(いやamazonで中古品は簡単に買えるよう・・・笑)、廃盤にしておくのはもったいない、というより罪である。井上&ローズの音楽もさることながら、日本語版では矢野顕子の可憐な声で、英語版ではガブリエルのあの上品な声でギャリコの小説が情感込めて語られるのだから。そうそう売れる代物でないのはわかるが、世のガブリエル・ファン、ジェネシス・ファン、あるいは矢野顕子ファンの皆が購入したとは思えない。とにかく復刻を願うばかり。 […]

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