雪の中のKJ法

100418_hachimantai.jpg東北新幹線で盛岡に向かう途中、福島あたりは大変な雪模様だった。朝早くに東京を発つときも真冬のような寒さで、手はかじかみ、ダウンジャケットでは凌ぎきれないほどの天気だった。盛岡駅から小1時間ほどレンタカーで走ると、工場と研修施設が建つ1万7千平米という敷地に到着した。着くなりぽつぽつと雪が降り始め、1日目の研修が終了した真夜中には随分降り積もっていた。そして、翌朝は一面の銀世界、雪化粧を施された樹々たちが何とも美しい。

川喜多二郎先生が考案したKJ法という手法を駆使して、幹部候補者を集めての研修。良くも悪くも素直で前向きに取り組む方たちだが、残念ながらイメージの飛翔があまり見受けられない。正解、模範解答を求めようとする頭が無意識に働くようで、きれいなのだが面白みに欠けるのである。それに決定的なのは、実践的に捉えられていないということ。あくまで「研修」の一環なのである。単なるゲームとして考えたならそれぞれの言動は全く問題ないが、会社のターニング・ポイントにある今、どのように自分たちが動き、対処していかなければならないのかという「当事者」意識が正直不足しているように思えてしまう。

人は環境に慣らされてしまうものだから、内部についてはなかなか客観的に見ることができなくなってしまうものだが、仕事を遂行していく上で「蟻の目、鳥の目」という観点はとても大事で、第三者的に外から俯瞰できる余裕をもてるようにならないと、厳しい現実社会に対処していくのに相当な壁が立ちはだかる。他人事ではないのだ。

ところで、「壁」といえば、20年少し前に崩壊したベルリンの壁のことをすぐ様思い出す。バーンスタインが”Ode to Freedom”と称してベートーヴェンの第9を演奏した。ロストロポーヴィチはまさにその壁の前でバッハの無伴奏組曲を奏でた。それぞれが「感動的」な一瞬を我々に届けてくれた。それまでそこに在った障壁が壊され、無くなるというのは実に感動的な出来事なのである。誰もが本当は自由を求めてブレイクスルーしたいのだ。でも、一方でそこには不安があり、過剰な自己防衛本能も存在する。

pink_floyd_wall.jpg勇気をもて。勇気こそが「人間力」向上の起爆剤である。逆に「人間力」を高めれば行動を起こす「勇気」が生まれてくる。

Pink Floyd:The Wall

フロイド2枚組の大作。この頃のピンク・フロイドはRoger Waters色があまりに強くなり過ぎて、ピンク・フロイドというバンドのバランスを崩しているように思え、僕としては100%全面的に良いと言い切れない。そういう意味ではセールス的には爆発的な人気を得たものの微妙なアルバム。”The Dark Side of the Moon”や”Wish You Were Here”、あるいは”Atom Heart Mother”のようにしょちゅう繰り返し聴きたいと思える音盤ではない。あまりに重く、聴いていると滅入ってくるようだから。

ただし、今日は久しぶりに聴いてみて良かった。頭が(身体も)疲れている時にはいいかもしれない。


3 COMMENTS

雅之

おはようございます。
>人は環境に慣らされてしまうものだから、内部についてはなかなか客観的に見ることができなくなってしまうものだが、仕事を遂行していく上で「蟻の目、鳥の目」という観点はとても大事で、第三者的に外から俯瞰できる余裕をもてるようにならないと、厳しい現実社会に対処していくのに相当な壁が立ちはだたかる。他人事ではないのだ。
「ガラパゴス化」っていう言葉が流行ってるじゃないですか。日本の携帯電話やオーディオ・ビジュアル機器などの技術や規格、サービスの世界で。内向き志向の日本だけ、技術力は高いのに孤立して・・・。
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%AC%E3%83%A9%E3%83%91%E3%82%B4%E3%82%B9%E5%8C%96
ガラパゴス諸島の動物って、天敵が少なくて、ストレスもなくて、羨ましいです。ガラパゴスゾウガメの人生(亀生)なんて楽しそうです(笑)。「バカの壁」って軽蔑されてもいいもん、人にどう思われようと自分らしく生きたいもん、って、お気楽に生きたいです。
ご紹介のピンク・フロイドの「ホワイトアルバム」、
>しょちゅう繰り返し聴きたいと思える音盤ではない。あまりに重く、聴いていると滅入ってくるようだから。
聴き込みが足りませんので多くを語れませんが、同感です。このアルバムを取り巻く、壁の内側に留まるか脱出するか、そのギリギリのところでの肩の力の入り具合が、今の我々日本人の苦悩にオーバーラップしてしまい、息苦しいです。
ちなみに量子力学では、「トンネル効果」という、不思議な壁の脱出方法があります。
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%88%E3%83%B3%E3%83%8D%E3%83%AB%E5%8A%B9%E6%9E%9C
「1Q84」のパラレルワールドの壁は、BOOK3でどう解決されたのでしょうか? 早く読みたいです。

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岡本 浩和

>雅之様
おはようございます。
>「ガラパゴス化」っていう言葉が流行ってるじゃないですか。
流行ってますね。そもそもを考えると、アメリカが世界を牛耳り、英語が世界標準語になっているという世の中がひょっとするとおかしいのかもしれません。もともと「日本」は言語的にも風土的にも特殊な国ですし、能力の高い国民なんですよね。「ガラパゴス化」というのはあまりに自己卑下的な表現ですが、これから先の世の中の流れを想像すると、それはそれでありで、もっともっと日本が先行していっていいと僕は思います。
>「バカの壁」って軽蔑されてもいいもん、人にどう思われようと自分らしく生きたいもん、って、お気楽に生きたいです。
ですねぇ(笑)。ただ、そうやって気楽に構えられないところがまた日本人の悪い癖ですね。
>壁の内側に留まるか脱出するか、そのギリギリのところでの肩の力の入り具合
ぴったりの表現ですね。「トンネル効果」というのは初めて聴きました。いまひとつよく理解できないので、今度ゆっくり教えてください。

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