何年か前、水樹和佳子の「イティハーサ」(古代日本を舞台に「人はどこから来てどこへ行くのか」という壮大なテーマの下繰り広げられるSF大河少女漫画!)に凝った時期があり、その中に次のような件がある(まさにラストの大団円につながる重要なシーン)。その一説だけ採り上げるのはかなり無理があるのだが(少々難解)、あえて抜粋させていただく。
『まず我等は神にあらず・・・
我等を表す言葉はここにはない
意識のある情報体
もしくは情報によって生じた意識体・・・
秩序ある混沌・・・
すべては人という種を
その進化の道から
そらさぬ為になされたこと・・・
人という種は
きわめて稀有な存在である
生命は情報の蓄積によって存在するが
ひとつの種にかかわる情報は
微少であり
それゆえ安定もしている
しかし人という種は転生を繰り返し
魂という受容体に無限に情報を蓄積する
それゆえ予測しえぬほど不安定でもある
また蓄積される膨大な情報は
意識下において個と個を超え
さらに複雑な情報系へと進展しつづけている・・・
これは調和に反する
人類は進化する反調和である』
(第7巻387頁~390頁)
「オワゾリール名盤」と題するシリーズものが今月になって何枚か復刻され、再発売された。『バロックのイメージを覆すような冒頭の不協和音が衝撃的なルベルの作品!』という帯のコピーが気になったのと、そういえば1980年頃に「レコード芸術」誌の広告ページで見かけた記憶が微かにあり、まだまだ当時はクラシック音楽の世界に足を踏み入れたばかりで、名前も聞いたことのないバロック期の作曲家の作品のレコードを買って聴こうなどとは思わなかったので、気になりつつも無視していた代物を、数日前タワーレコードの店頭で見かけ、購入した。「イティハーサ」を思い巡らせながら、この音盤をじっくりと繰り返し聴いてみる。
ルベル:バレエ「四大元素」
クリストファー・ホグウッド指揮エンシェント室内管弦楽団
確かに第1曲の「カオス(混沌)」と称する楽章の「混沌」ぶりはこの曲がとても17世紀に創造されたものとは思えないほど(そうかといって不協和音に慣らされた現代の我々の耳からするとそれほどのショックはないのだが)。これはなかなか興味深い!ただ、その後に続く音楽はいかにもバロックでとても耳に心地よく、「調和」と「混沌」がまさに表裏一体であることを示してくれる。かっこいい!!
古代ギリシャの哲学者エンペドクレスは、物質が「火、水、土、気」からなり、「愛」によりそれらが結合し、「争い」によりそれらが離散すると説いた。宇宙は「愛の支配」と「争いの支配」とが終わることなく永遠に繰り返しているのだという。
後世に「四大元素」と呼ばれたこの説を再発見したのが、イタリア、ルネサンス初期の医師であるパラケルスス。彼は1541年9月24日に没しているということなので、偶然だが、今日が命日ということになる。
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