
かつてポール・サイモンは次のように歌った。
“Kathy, I’m lost,” I said,
Though I knew she was sleeping.
“I’m empty and aching and
I don’t know why.”
Counting the cars
On the New Jersey Turnpike.
They’ve all come
To look for America,
All come to look for America.
“America”
ベトナム戦争下、無益な戦いの中で誰もが迷っていた、誰もが苦悩の中にあったあの時代、人々は「真実」を求めた。
私は、芸術における国際連盟(League of Nations in Art)を提唱しようと思う。ここには政治家たちの論争を巻き起こすような、契約も草稿も法廷の調停も組織も必要ない。この連盟は単に、世界に対する精神の態度の中に存在するものなのである。世界大戦は、明らかに地球の人々を近しいものにした。我々は今やお互いを以前より近い距離から眺めており、こうした接近によって様々な差異は無効になりつつある。真に理解しあっている国々ならば、些細な国民的特徴を理由にして仲たがいすることはないだろう。そして芸術—音楽、文学、絵画—の自由な交流こそが、こうした人々の相互理解を可能にするのである。
(1919年3月23日付ニューヨーク・タイムズ)
~沼野雄司著「エドガー・ヴァレーズ—孤独な射手の肖像」(春秋社)P126
第一次大戦後、エドガー・ヴァレーズが「芸術における国際連盟」と題してニューヨーク・タイムズに投書した文面である。ヴァレーズが言うように、確かに戦争が「地球の人々を近しいものにした」のだろうと思う。
沼野雄司さんによると、当時のヴァレーズは、(単に世界の芸術のかの交流を呼びかけるのではなく)アメリカという新しい土地における創作に注意を向けてほしいと、折に触れて主張しており、上記の文章にもその思いが反映されているそうだ。
アメリカにわたったヴァレーズが書いた初めての管弦楽作品「アメリカ」。そのタイトルは、フランス語の綴りで、しかも複数形である点がミソ。
作曲者はその点について次のように書く。
アメリカというタイトルは、単に地理的な意味としてではなく、様々な発見の象徴という意味をも持っています。地上の、空の、そして人の心の中の新しい世界を示しているのです。
~同上書P115
魑魅魍魎、明暗、表裏、陰陽、すべてを含む「アメリカ」は稀代の傑作だと思う。
シャイー指揮コンセルトヘボウ管が奏でるとっつき難い前衛性と、それだからこそ一体となる親密性。表と裏が混在する「アメリカ」の醜さと美しさ。サイレンが鳴らされるたびに境界線を越えよという声が聞こえるよう。
Imagine there’s no countries
It isn’t hard to do
Nothing to kill or die for
And no religion too
Imagine all the people
Living life in peace…
“Imagine”
ジョン・レノンがおそらく歌わされた(創らされた)、どうにもジョンらしくない歌が彼の代表曲になってしまっているが、この詩はやはり真理だ。

・John Lennon and The Plastic Ono Band:Imagine (1971)
手放すときが来た。
・Simon and Garfunkel:Bookends (1968)
Personnel
Paul Simon (vocals, guitar)
Art Garfunkel (vocals, tapes, percussion)
ブックエンドのテーマ。
それは、何とも厭世的で、諦念の境地だが、すべてが幻であることを暗に示唆するそこにはやはり真実がある。

Time it was,
And what a time it was,
It was…
A time of innocence,
A time of confidences.
Long ago…it must be…
I have a photograph.
Preserve your memories;
They’re all that’s left you.
名曲だ。