リヒテル バッハ イタリア協奏曲BWV971(1991.11Live)ほかを聴いて思ふ

夜更けのエリック・サティ。ピアノはジャン=イヴ・ティボーデ
気怠いサティを聴きながら、バッハに思いを馳せた。
サティは語る。

・・・明晰さ・・・精神が—イタリアおよびフランスの作品では勝利をおさめるのです・・・
・・・バッハにおいては・・・表現は厳粛で・・・美しく、またやさしいのです。・・・
・・・グルックのもとでは・・・演劇的です。ペルゴレージにあっては甘美なものとなります・・・
・・・そして壮麗な対位法が駆使されます・・・

エリック・サティ著/秋山邦晴・岩佐鉄男編訳「卵のように軽やかに」(ちくま学芸文庫)P43

何て的を射た表現なのだろう。

スヴャトスラフ・リヒテルのバッハを聴いた。
イタリア協奏曲ほか。表現は厳粛でありながら、実に明晰。

サティはまた、次のようにも書く。

近代和声はドイツ産だ。ドイツ・ロマン派がそれをつくったのだ。
対位法のほうはラテン系だ。バッハの対位法は、イタリアの巨匠たちよりずっと後のものである。

~同上書P173

先達の方法をより一層昇華させ、次世代のつなげたことが、否、唯一無二か(?)、バッハの功績だ。そして、リヒテルの自由闊達な演奏が心に沁みる。

ヨハン・セバスティアン・バッハ:
・イタリア協奏曲ヘ長調BWV971(1991.11Live)
・フランス風序曲ロ短調BWV831(1991.3Live)
・デュエット第1番ホ短調BWV802(1991.11Live)
・デュエット第2番ヘ長調BWV803(1991.11Live)
・デュエット第3番ト長調BWV804(1991.11Live)
・デュエット第4番イ短調BWV805(1991.11Live)
スヴャトスラフ・リヒテル(ピアノ)

おそらくここには聴衆との気の循環、というか交歓がある。音の色艶といい、音楽の流れといい、リヒテルの素直さというか実直さと自由さが思いの外伝わり、素晴らしい。
長尺のフランス風序曲の優しさ、また柔らかさ。15分超の序曲は堂々たる音調。中でもサラバンドは極めつけ。

4つのデュエットの深遠さ、文字通り壮麗な対位法の駆使。
そして、それを縦横に表現し、聴く者の魂を鼓舞するピアニストの技量。完璧だ。

再びティボーデのサティに戻り、繰り返す。
ジムノペディ第1番。涙が出るくらい哀しく、また懐かしい。
グノシェンヌ。心静かに、静寂の中のミステリー。
嗚呼、音楽はいつまでも終わらない。

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