人の祖先がアフリカから出ているのかどうか真相はよく知らないが、少なくともアフリカ固有の土俗的な音楽を聴く限りにおいて、身体が自然に反応してしまうわかりやすいリズムと、西洋音楽では使用されないような楽器のずしんと心に響く低音の魅力に何とも懐かしさを覚え、やっぱり我々は彼の地から生まれ出て来たのだろうという思いについつい駆られる。
残念ながら僕はアフリカの地を踏んだことがない。そのチャンスがなかったわけではないのだが、当時は関心を持てず動かなかった。
もう20年前になる。エチオピアの孤児院の支援をする団体に関わっていたのは。そのプロジェクトは内戦の勃発と同時に自然消滅してしまったが、合計3回ほど物資をもって渡航するツアーが計画された。行った人間に聴いてみると、皆一様に「素晴らしかった」と答える。その自然、街並み、どれをとってもカルチャー・ショックで、月並みな言い方だが、日本人が忘れ去ってしまった「何か」がそこには存在したと。
世界初、真実のポップという宣伝文句で、ちょうどその頃にリリースされたリアルワールド・レーベルからの第2弾アルバム。映画「最後の誘惑」(マーティン・スコセッシ監督)で使われていたアラブ、アフリカ音楽を集めた最高の1枚。
今は亡きヌスラット・ファティ・アリ・ハーン(イスラム教の宗教音楽であるカッワーリーの歌い手。Peter Gabrielの主宰するWOMADやRealworld Musicで日本でも良く知られるようになった)の歌声により幕が上がる。イスラム教については残念ながらよくわからない。カッワーリーが何ぞやというのも然り。歌われている内容も皆目見当がつかない。それでも、その音だけで十分に人の心、魂を揺さぶる「熱」が感じられるのだから見事。そして、今や有名なラヴィ・シャンカール率いるエピデミクスの演奏も聴ける(タブラやタンブーラという楽器の音、それにシャンカールが弾くダブル・ヴァイオリン)。いやもうこういう民族楽器の奏でる音の何と素敵なことか・・・。
さらには、モロッコの作者不詳のウェディング・ソングなどもとても良い味を出しているし、映画の「売春宿のシーン」で使われた「ヤ・サー」というトラディショナル音楽も心に染みる・・・。
人間の心の故郷は、アラブやアフリカ地方にあるのだろうか、やっぱり。
昨日、ナチュラル・サイエンス社の打ち合わせでお借りしてきたコンゴ・ギブ地方の民謡「ゴリラとあそぼう」も単純でありながら、耳について離れない。不思議な音楽。
おはようございます。
アラブ~アフリカの音楽についてのブログ本文内容、知らなかったことが多く、勉強になります。感謝です。
アフリカ大陸については、一言では語れませんね。日本、南北朝鮮、中国他を「アジア」と一括りで語る以上に大雑把ですね。私も、もう少し基礎の基礎から勉強してみたくなりました。
・・・・・・アフリカ大陸というと、どこも暑くて、肌の黒い人が住んでいると考える人がいる。しかしそれは当たっていない。この大陸は、巨大なサハラ砂漠を境にその北と南とでは自然環境もそこに住む人々も相当異なっているからだ。
たとえば、マグリブ地方(アルジェリア、モロッコ、チュニジア、リビア)、エジプト、エチオピアなど北アフリカでは、沿岸地方は地中海性気候のきわめて温暖な地域で、そこに住む大半がアフロ・アジア系(セム・ハム)で、わたくしたちがふつうに考える黒人系の人々ではない。しかも彼らの社会はアラブ圏に属し、サハラ砂漠より南の、いわゆるブラック・アフリカ(この地域の住民の大半が黒人系であることからこうよばれる)とは文化的にも大きく異なっている。したがって一般に「アフリカ」というと、アラブ文化の濃厚なこの北アフリカを除いた、サハラ以南のブラック・アフリカのことをさすのがふつうだ。そこで、本章でもアフリカという語をブラック・アフリカの意味で用いることとしよう。
さて、アフリカと一口にいっても、それは広大な地域にわたる。西はかつての奴隷貿易の中心地であったナイジェリアなどギニア湾沿岸の国々から、熱帯雨林のひろがるコンゴなどアフリカ中部の国々をへて、東は独自の海洋都市文化(スワヒリ文化)を発達させた、ケニア、タンザニアなどの国々、さらに南は新生国家としていま注目を集める南アフリカ共和国にいたるまでの広大な地域なのである。
また自然環境も変化にとんでいる。赤道を中心に西アフリカ沿岸から大陸中部にかけては広大な熱帯雨林地帯がひろがっており、この地域を北部、東部、南部からサバンナ地帯がとりかこんでいる。そして大陸を南部にくだるとカラハリ砂漠の乾燥地帯があり、さらに大陸南端の沿岸地方には地中海性気候の温暖地帯もある。
またそれに劣らず多様なのは、そこに住む人々だ。アフリカでは七百以上もの異なる言語が話されているといわれる。極端にいえば、その数だけ異なる文化があるともいえるだろう。まず、西アフリカから中部、南部アフリカにかけてはニジェール・コンゴ派とよばれる一大言語集団が分布している。中部、南部で主要な位置をしめるバントゥー語はその代表的なものだ。しかし、西アフリカでこの一大集団にくさびを打ちこむように分布しているハウサ族の言葉はまったく別系統のアフロ・アジア的な言語であるし、またスーダンやウガンダなど東アフリカのナイル川上流にはナイロート語とよばれる、さらに別系統の言葉をはなす人々が住んでいる。そしてこのような黒人系住民のあいだに、非黒人系の集団が点在している。それがいわゆるピグミーであり、またかつてはブッシュマンとよばれたサン、ホッテントットとよばれたコイの集団なのである。これらの人々は人種的、形質的にはいわゆる黒人とは区別されている。言語についても、ピグミーはもはや自分たち独自の言葉を失っているが、コイとサンはコイサン語族とよばれる周辺のものとは異なる言語を話す。しかも、この非黒人系のコイサン諸族こそ、ピグミーとならんで、アフリカ最古の先住民族と考えられている人々なのだ。・・・・・・
柘植 元一 ・ 塚田 健一 編「はじめての世界音楽―諸民族の伝統音楽からポップスまで」音楽之友社 第一章 アフリカ 1.民族的背景 (20~21ページ)より
http://www.amazon.co.jp/%E3%81%AF%E3%81%98%E3%82%81%E3%81%A6%E3%81%AE%E4%B8%96%E7%95%8C%E9%9F%B3%E6%A5%BD%E2%80%95%E8%AB%B8%E6%B0%91%E6%97%8F%E3%81%AE%E4%BC%9D%E7%B5%B1%E9%9F%B3%E6%A5%BD%E3%81%8B%E3%82%89%E3%83%9D%E3%83%83%E3%83%97%E3%82%B9%E3%81%BE%E3%81%A7-%E6%9F%98%E6%A4%8D-%E5%85%83%E4%B8%80/dp/4276135311/ref=sr_1_1?s=books&ie=UTF8&qid=1297896866&sr=1-1
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%A2%E3%83%95%E3%83%AA%E3%82%AB
>雅之様
おはようございます。
本の紹介ありがとうございます。
未読ですが面白そうです。雅之さんに話題を振ることで、いろいろと新しい貴重な情報をいただけてありがたいです。感謝いたします。アラブ、アフリカに限らず民族音楽はいろいろと聴いて研究してみたくなります。
以前も紹介しましたが、「ワールド・ルーツ・ミュージック・ライブラリー」やっぱり揃えてみたいですね・・・。
http://classic.opus-3.net/blog/cat29/post-673/