ワルター指揮バンクーヴァー祝祭管 ブラームス交響曲第2番リハーサルほか(1958.7録画)

ブルーノ・ワルターのリハーサルは、実に細かいところにまで手の届く緻密なものだ。納得行くまで幾度も繰り返されるその方法は、楽員の視点からはあまりに執拗なものとして映りそうだが、彼の言葉、身ぶりなどすべてに愛情あることが確認できる。崇高な芸術の伝道者としてのワルターの本領発揮ともいうべき、バンクーヴァー祝祭管弦楽団に客演してのブラームスの交響曲第2番は、優しくも激情に富む、とても若々しい表現だ。

一番の問題は、いかにして演奏家を操るかだね。どうすれば言葉や態度や視線で演奏家に影響を与えられるか、指揮者の人間的資質によるところが大きいと言うべきだろうね。思いやりと誠実さがあれば相手が遥かに優れた演奏家でも指揮者の言うことを聞き、意見を受け入れるだろう。だから、演奏家を掌握するために指揮者のモラルの質は決定的だ。だが指揮者への要求は実に多種多様に及ぶし、その要求を満たすには大きな許容力が必要になる。
(1958年、LAタイムズ、アルバート・ゴールドバーグ氏とのインタヴュー)

ここでワルターは、音楽的資質よりも自然を感じ、人を思う精神的資質が音楽家の経歴や業績の質に影響を及ぼすものだと断言する。

ブルーノ・ワルターの芸術/ザ・マエストロ
・ブラームス:交響曲第2番ニ長調作品73
―第1楽章リハーサル風景
―インタヴュー(アルバート・ゴールドバーグ)
―第4楽章リハーサル風景
ブルーノ・ワルター指揮バンクーヴァー祝祭管弦楽団(1958.7録画)

冒頭から丁寧になされる音作りの妙。第1楽章アレグロ・ノン・トロッポが見る見るワルターの音楽に変化して行く様に感動を覚える。引退後のワルターは、後進の育成を兼ね、様々なオーケストラに客演したが、晩年とはいえ生き生きとした音楽の質は、他を冠絶するのだ。特に、終楽章アレグロ・コン・スピーリトの燃えるような、激しい、怒涛の表現に思わず興奮。圧倒的だ。

ブラームスの自然の音楽へのワルターの愛。
慈悲と厳しさに溢れる人間味。言葉がない。

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