ムストネン ショスタコーヴィチ 24の前奏曲作品34

社会から逃避する芸術家はやがて滅びる運命にあると私は思う。芸術家が、結局は自分の聴衆となる人々に垣根を設けようとするとは考えられない。芸術家はできるだけ多くの人々に奉仕するべきだと思う。だから、私は常にできるだけ広範な人々が自分の芸術を理解してくれるように努めている。私がこれに失敗したならば、それは私自身の誤りなのだと私は思う。
(R.リー「若きロシアの作曲家ドミートリー・ショスタコーヴィチ、政治と創作活動との関係について語る」「ニューヨーク・タイムズ」1931年12月20日付、「自伝」所収P31
「ショスタコーヴィチ大研究」(春秋社)P108

ショパンを規範にし、1932年から33年に創作された24の前奏曲の、保守性と革新性の驚くべきバランスを若きオリ・ムストネンが絶妙に音化する。何と透明な音楽なのだろう、何と可憐な音楽なのだろう。そこには舞踊があり、また祈りがある。そう、これはショスタコーヴィチの、聴衆への大いなる奉仕の精神の賜物だ。

・ショスタコーヴィチ:24の前奏曲作品34(1932-33)
・アルカン:25の前奏曲作品31
オリ・ムストネン(ピアノ)

全24曲が30分ほどで奏でられる美しいピアノ音楽たち。
最終的に十二音技法を否定するショスタコーヴィチにあって、この頃はモダニズム路線を踏襲しつつも懐古的な、前時代的浪漫の風趣を失わない魔法。

人間の努力を必要とすることすべてに当てはまることですが、音楽においても、新しい道を探求することは重要だと私は考えています。しかし私は十二音音楽だけは無駄なことだと思っています。このまったく人為的な様式には偏屈な独断的精神があって、作曲家の創造的想像力を麻痺させるばかりか、その個性まで抹殺してしまいます。
(「ワルシャワの秋」音楽祭訪問の際のインタヴュー。「聴衆大衆は現代の音楽に忠実」「ソヴィエト音楽」誌1959年11月号)
~同上書P108

確かにショスタコーヴィチの音楽には大宇宙の摂理に従った自然さがあるように僕は思う。特にこの前奏曲集の美しさは空前絶後。天才がここにある。

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