Herbie Hancock “Speak Like a Child” (1968)

エレクトリックなハービー・ハンコックもかっこいいが、やっぱり彼の原点はアコースティック・サウンドにあるように僕は思う。

アコースティックなジャズも捨てられなかった。マイルスのように一途じゃないんだ(笑)。「ジャズが自分の原点」という思いが強い。それとアコースティックなジャズを演奏しているときに次のヒントが思い浮かぶこともある。意識していないとエレクトリック・サウンドではテクノロジーが優先されてヒューマンな要素が希薄になってしまう。油断大敵だ(笑)。それをぎりぎりのところでこちら側(ヒューマンなもの)に保っているのがアコースティック・ジャズ的な感性だ。ただし、アコースティック・ジャズとエレクトリック・ミュージックを融合させる気持ちはない。それぞれが別のものと考えている。でも、だからこそどちらの場合も吹っ切れて音楽を作ることができる。
小川隆夫「ジャズジャイアンツ・インタヴューズ」(小学館)P222-223

ハンコックは正直だ。ジャズ、ポップス双方の世界でスーパースターになった後も、彼の言葉には常に謙虚さがある。そして、決して革新を目指さず、「興味のあることを追求していたらそうなった」という言葉に、彼の(無自覚の)天才を思う。

1968年の名作(1968年3月6日&9日録音)。

・Herbie Hancock:Speak Like a Child (1968)

Personnel
Herbie Hancock (piano)
Ron Carter (bass)
Mickey Roker (drums)
Jerry Dodgion (alto flute)
Thad Jones (flugelhorn)
Peter Phillips (bass trombone)

疾走する”Riot”がセンス満点で良い。あるいは、アルバム・タイトルとなった”Speak Like a Child”の洗練された、夜更けに似合う、官能の響きが素敵だ(ジェリー・ドジオンのアルト・フルートがとりわけ好み)。そして、ロン・カーター作”First Trip”がまた軽快で美しい。
最美は、哀愁漂う”Goodbye to Childhood”。

赤子の心が投影される、無垢な、天真爛漫なハンコックの純粋世界。過剰でなく、また不足もない調和の音楽。今日という日に乾杯。

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