McDonald and Giles (1970)

イアン・マクドナルドが逝った(2月9日)。
虫の報せなのか何なのか、ここしばらく、イアンに思いを馳せ、フォリナーなどを採り上げていたものだから少々驚いた。
一時代を築いたプログレの重鎮たちがどんどんいなくなってしまう。

おそらく(作曲時)トリップ状態にあったのか、イアン作の”Suite in C: including Turnham Green, Here I Am and others”の、風変わりな、夢の中にあるような詩と内向的な美しい音楽に心が動く(1969年12月から70年2月にかけてシャルロッテのために作曲)。そして、クリムゾンのセカンド・アルバム収録の”Cadence and Cascade”の原曲となった”Flight of the Ibis”は、イアン・マクドナルドとバーナード・パトリック・ファロンの共作だが、シンプルで歌唱が主体となるクリムゾン版に対して器楽主体の方法が、聴く者の内省を一層喚起する。短い”Is She Waiting?”(1969年夏、ギグの最中に生まれる)はキャッチーなとても良い歌だ。さらに、マイケル・ジャイルズが1967年に2人の子どもたち(ティナとマンディー)のために書いたものをベースに、1970年にアレンジを施した”Tomorrow’s People – The Children of Today”の可憐さよ。
何よりイアンのマルチ・プレイヤーぶりが存分に発揮されたラスト・ナンバーの(22分近くに及ぶ)大作”Birdman”はピート・シンフィールドの幻想的な物語にイアンがここぞとばかりに当時のすべてを賭けたであろう逸品(ほとんどが1968年の春に書かれたが、完成は1970年)。空を飛ぶことを夢みた男の真実がここにはある。そう、肉体は有限だけれど魂は無限であり、自由自在であることを彼は知っていた(音楽はどこまでも飛翔する)。

Weary from his journey
Birdman set for homeward
Gliding thorough the sunset
He very gently floated down
Down to the ground

繰り返し聴くにつけイアン・マクドナルドの抜群の音楽性(&作曲能力)に舌を巻く。

・McDonald and Giles (1970)

Personnel
Ian McDonald (guitar, piano, organ, saxes, flute, clarinet, zither, vocals and sundries)
Michael Giles (drums, percussion [including milk bottle, handsaw, lip whistle and nutbox],vocals)
Peter Giles (bass guitar)
Steve Winwood (organ, and piano solo on “Turnham Green”)
Michael Blakesley (trombone on “Tomorrow’s People”)

「クリムゾン・キングの宮殿」から暴力的な劇性を排除したような、静謐な抒情性が前面に押し出された印象のアルバムだけれど、間違いなくこれは「宮殿」と二卵性双生児であり、傑作だ。願わくばこの先も新たな創作が続けば良かったのだが、2人のコラボレーションはたった一度きりで終わった。
合掌。

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