ブッシュ弦楽四重奏団 ブラームス 弦楽四重奏曲第3番変ロ長調作品67(1949.5録音)ほか

草分けあらえびすのレコード評論。
LPレコードがいまだ長時間レコードと称された、SPレコード中心の時代の名盤たちを、今では手軽に聴くことができる。復刻にあたって正しく、本来の、ありのままの音を届けてくれるのかどうかは疑問もあるが、ほとんど一発録りのような演奏が、かえってライヴ感に富み、聴いていて本当に心が動くこと多々で、音楽とは、実体のない、あっという間に消えてしまう真の芸術なんだと痛感する次第。
(あくまで気の世界のことだが、レコード芸術史100年の頂点の時代であったように思う)

ブラームスの絃楽四重奏曲についてのコメントはたった数行。

「絃楽四重奏曲=ハ短調(作品51ノ1)」はブラームスの室内楽の良さと、そのくすんだ渋さを聴くが宜い。レコードはレナー四重奏団とブッシュ四重奏団とがあるが、私はやはりブッシュを採る。
「絃楽四重奏曲=イ短調(作品51ノ2)」はレナーだけ。

あらえびす「クラシック名盤楽聖物語」(河出書房新社)P229

どういうわけか四重奏曲変ロ長調作品67に関する言及がない。
おそらく執筆当時、未録音だったのだろう(あるいは日本では紹介されていなかった?)。

ブラームス:
・弦楽四重奏曲第3番変ロ長調作品67(1949.5.17&21録音)
ブッシュ弦楽四重奏団
アドルフ・ブッシュ(ヴァイオリン)
ブルーノ・シュトラウマン(ヴァイオリン)
フーゴ・ゴッテスマン(ヴィオラ)
ヘルマン・ブッシュ(チェロ)
・ピアノ四重奏曲第1番ト短調作品25(1949.5.25&26録音)
ルドルフ・ゼルキン(ピアノ)
アドルフ・ブッシュ(ヴァイオリン)
フーゴ・ゴッテスマン(ヴィオラ)
ヘルマン・ブッシュ(チェロ)

晩年のブッシュは、表現が一層円熟を増し、ブラームスの枯淡の表情を丁寧に紡ぎ出す。多少古臭い奏法も見られるが、かえってそれが音楽の真実を現出するようで、この生命力は第1楽章ヴィヴァーチェに顕著だ。第2楽章アンダンテの優美さと(同時に)力強さ(ブッシュ四重奏団の強みはこういう音楽表現にある)、あるいは第3楽章アジタートの懐かしさ!
そして、(戦後まもなくという)傷の癒えない情感を引きずりながらの終楽章ポコ・アレグレット・コン・ヴァリアツィオーニが絶品!
(第1楽章の主題が回帰する瞬間のカタルシス)
(何しろブラームスの音楽が素晴らしい)

HMVのドイツでの新会社エレクトローラ社は、1926年からブッシュを勧誘していたところ、そこにコロムビア社も加わりました。結果的にエレクトローラ社が勝ったのですが、実際に録音が行なわれたのは1928年4月23日になってからで、1929年6月11日の録音と同様に、発表されることはありませんでした。幸運なことに、各セッションからバッハのパルティータニ短調を片面ずつ、そしてブッシュとゼルキンが現代蘇演を行なった、20世紀になってから発見されたバッハのソナタ(1929年10月24日録音)が残されました。その後、1931年5月には二人はロンドンでシューベルトの幻想曲の録音を開始し、それは伝説となりました。

1932年9月、ブッシュ弦楽四重奏団はアビーロード・スタジオ3で活動を開始しました。
ベートーヴェンの後期四重奏曲のアダージョ楽章において集中力を維持するために、ブッシュは基本的に1テイクで録音しましたが、それでも必要とあらば別の日に繰り返し演奏しました。ロングトーン、心に残るカンティレーナ、そして本能的なリズムコントロールで知られるブッシュは、アダージョ楽章において挑戦的なほど遅いテンポを設定しながらも、メンバーのサポートを受けて深く精神性の高い解釈を実現したのです。

ゼルキン ブッシュ弦楽四重奏団 ブラームス ピアノ五重奏曲ヘ短調作品34(1938.10.13録音)ほか ブッシュ弦楽四重奏団 シューベルト 弦楽四重奏曲第15番(1938.11録音)ほか

例えば、ブラームスの四重奏曲とシューベルトの3曲は、リズミカルな活気、音響的拡がり、力強さと激しさを獲得しており、シューベルトの変ロ長調では生き生きとした演奏が披露されました。また、ゼルキンは、ブラームスのピアノ五重奏曲とピアノ四重奏曲イ長調、また2つの三重奏曲変ホ長調、シューベルトの後期の傑作、において揺るぎない存在感を示しました。

好調に録音活動を続けるものの、途中、戦争が彼らの前に立ちはだかりました。
モーツァルト、シューベルト、ブラームスの弦楽五重奏曲など多くの計画があり、そのすべては幻と化しました。例えば、ベートーヴェンの作品18-6も完成する時間もなく頓挫したのです。そんな中、ブッシュとメンバーたちは、アメリカ・コロムビア社のために録音を続け、幸いにもベートーヴェンの後期四重奏曲は作品130で完結し、崇高な第5楽章カヴァティーナは並外れた内省をもって演奏されました(ちなみに、ブッシュは「大フーガ」を室内オーケストラと演奏することを好みました)。


特に、戦後のブッシュ弦楽四重奏団の貴重な録音、メンデルスゾーンとブラームスの作品、中でもブラームスの四重奏曲ト短調は、ゼルキンの円熟した高い芸術性に富んだ録音となっています。
(タリー・ポッター)

ブッシュ弦楽四重奏団 ベートーヴェン 弦楽四重奏曲第13番作品130(1941.6録音)ほか

ポッターが貴重な録音として紹介するブラームスのピアノ四重奏曲は、その評のとおり、若きルドルフ・ゼルキンがリーダーシップをとる、推進力の高い名演奏。

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