フルトヴェングラー指揮北ドイツ放送響 ブラームス 交響曲第1番ハ短調作品68ほか(1951.10.27Live)

30年近く前、この録音を初めて聴いたとき、僕は心底感激した。
それまで聴いていたDGのライヴ録音をはるかに超える感興と興奮。
これぞブラームスの交響曲第1番だと、当時、僕は思った。
(実際はそれ以前にフランス協会復刻によるアナログ盤を聴いていたのだが、すっかり記憶から消えていた)

フルトヴェングラー指揮北西ドイツ放送響 ブラームス 交響曲第1番ハ短調作品68ほか(1951.10.27Live)(SWF 8201-02) フルトヴェングラー指揮北ドイツ放送響のブラームス1番ほか(1951.10.27Live)を聴いて思ふ フルトヴェングラー指揮北ドイツ放送響のブラームス1番ほか(1951.10.27Live)を聴いて思ふ

それから数年して、よりオリジナルの音質に近い形でリマスターされたセットからの1枚を聴いて正直僕は失望した。多少のお化粧が施されていようと、聴く者にどれだけの感銘を与えるかどうかが「レコード芸術」の役割だと思ったからだ。新たに収録されていたそれは、音圧は妙に低く、音楽の造形は変わらないのに、とても遠慮がちな、矮小な印象を僕に与えた。だから、感動にはほど遠いものだった。

いよいよ新たな一歩を いよいよ新たな一歩を

同様のケースは、例の、バイロイトの「第九」(1951年)にもいえる。
20年ほど前に突如としてオルフェオからリリースされた当日の真正のライヴ録音はそれまで僕たちが享受していた演奏内容とはまったく異なるものだった。どちらが本物なのか、この現象はどういうことなのか、当時、専門誌で相当議論されたが、結局従来のEMI盤は、プロデューサーであるウォルター・レッグの手が入った編集盤であったということに落ち着いたのである。

シュヴァルツコップ ヘンゲン ホップ エーデルマン フルトヴェングラー指揮バイロイト祝祭管 ベートーヴェン 交響曲第9番ニ短調作品125「合唱」(1951.7.29Live) フルトヴェングラー指揮バイロイト祝祭管 ベートーヴェン 交響曲第9番「合唱」(1951.7.29Live) フルトヴェングラー指揮バイロイト祝祭管のベートーヴェン第9番(1951.7.29Live)を聴いて思ふ フルトヴェングラー指揮バイロイト祝祭管のベートーヴェン第9番(1951.7.29Live)を聴いて思ふ フルトヴェングラー指揮バイロイト祝祭管のベートーヴェン第9(1951.7.29Live)を聴いて思ふ フルトヴェングラー指揮バイロイト祝祭管のベートーヴェン第9(1951.7.29Live)を聴いて思ふ

今となってはそれでも編集盤の価値は変わることがない。
変わることがないどころか不朽だろう。
それくらいにあの演奏(録音)には衝撃があり、また感動があり、存在意義があったのだ。

僕たち人間にとって「インプリンティング」というのは強烈だ。
(生涯の刷り込みになり、影響を与える)

生憎、ブラームスの最初に手に入れた音盤は、今、別荘に置いてあって、手許にない。
だから今日もリマスター盤を聴いて、やっぱり(演奏は素晴らしいのに)その音質に失望する僕がいた。

ブラームス:
・ハイドンの主題による変奏曲作品56a
・交響曲第1番ハ短調作品68
ヴィルヘルム・フルトヴェングラー指揮北ドイツ放送交響楽団(1951.10.27Live)

ハンブルクはムジークハレでの実況録音。
手に汗握る、遠心力と求心力の両方を保つ、いかにもフルトヴェングラーという、劇的な演奏。ここにこそヨハネス・ブラームスの本質が見える。

つまりブラームスが時代の危機を体験した最初の音楽家となったのは、彼が時代の子として時代に行きづまりを感じたからではなく、ひとえに時代との対決によるものであった。ここで「反動」などという言葉を口にするのは正しくない。彼は近代人であり、生涯それ以外の何者でもなかった。彼が全人間的なものの統一を放棄しない場合ですらも、否—今日私たちが見るように—そのような場合こそ、とりわけ彼は近代人であったのだ。
それゆえ彼の芸術はつねに素朴であり、人間味ゆたかであった。彼は、あくまでも単純、あくまでも自然でありながら、しかも完全に自己を保持することができたのである。

「ブラームスと現代の危機」(1934年)
フルトヴェングラー/芦津丈夫訳「音と言葉」(白水社)P95-96

フルトヴェングラーのブラームスが感動的なのは、ブラームスへの的を射た彼なりの評があり、思考があったからだと思う。そして、素朴で、単純で、人間味ゆたかなブラームスの音楽は年齢を重ねるにつれ枯れていった。
だからこそ、交響曲でいうなら、フルトヴェングラーの性質、方法に最も適するのは交響曲第1番ハ短調だったのだと僕は思った。

コメントを残す

このサイトはスパムを低減するために Akismet を使っています。コメントデータの処理方法の詳細はこちらをご覧ください

アレグロ・コン・ブリオをもっと見る

今すぐ購読し、続きを読んで、すべてのアーカイブにアクセスしましょう。

続きを読む