ただただ音楽に浸る・・・

こうやってほぼ毎日のように記事を更新しながら思うこと。伝えたいこと、発信したいことが特にないのに惰性で、あるいは無理矢理話題を探して書こうとするとどうも調子が悪い。それは当然。頭で考えてただ書き連ねたものは表層的だし、伝わらない。そこに相応の想いがあってこそ伝わるものだろうから。たまには思考を止めて、ただただ音楽に浸ってみようか。

いよいよ冬の到来か。今日は本当に寒い。そんな早朝に独り静かに小音量で聴く歌曲や室内楽は不思議に心地良い。ナディア・ブーランジェの歌曲とチェロのための作品集。妹のリリが若くして亡くなって、彼女の方が自分よりも才能があったと考え作曲の筆を折ったらしいが、何の何の・・・、その響きは憂い・哀しみに溢れ、確信に満ちたその音楽たちは、リリのものとは違った意味で聴く者の心を捕えて離さない。フランス近代の、例えばドビュッシーやラヴェルの音楽より一世代前のフォーレの音楽にどちらかと共通点を感じさせるナディアの作品は、浮雲のような浮遊感と、一方で大地にしっかりと根差した堅牢さが同居する。本人が自覚していたように、確かに革新的な要素は少ないのかもしれない。しかし、そのことが結果的に彼女の作品を近づきやすくする。

ナディア・ブーランジェ:歌曲&室内楽作品集
・5つの歌(1909)
・「新たなる人生へ」(ピアノのための)(1916)
・「明るい時間」(8つの歌曲)(1909)
・7つの歌(1915/1922)
・チェロとピアノのための3つの小品(1913)
メリンダ・パウルセン(メゾソプラノ)
アンゲラ・ガッセンフーバー(ピアノ)
フリーデマン・クプサ(チェロ)

女性作曲家の音楽作品には男にはない「力強さ」が垣間見える。器が大きいというのか、許容範囲が広いというのか、おそらく専門的にはいろんな音楽的チャレンジをしているのだろう、本当に気持ち良く音の中に身を委ねられる。女性特有の包容力というか・・・それこそ「癒し」音楽。
小難しいことは考えず、今夜ももう一度ナディア・ブーランジェを。ちなみに、1909年の「5つの歌」のテキストは、ポール・ヴェルレーヌ、モーリス・メーテルランク、アルベール・サマン、アンリ・バタイユ、ハインリヒ・ハイネの詩による。

第1曲「沈む日」(詩:ポール・ヴェルレーヌ、訳:堀口大學~「ヴェルレーヌ詩集」
たよりないうす明り
沈む日の
メランコリヤを
野にそそぐ。
メランコリヤの
歌ゆるく
沈む日に
われを忘れる
わがこころ
うちゆする。
砂浜に
沈む日もさながらの
不可思議の夢
紅の幽霊となり
絶えまなくうちつづく
うちつづく
大いなる沈む日に似て
砂浜に。

そしてチェロとピアノのための3つの小品!リリが「天の空間」という驚異的な作品を生み出す同じ時期、傍らナディアはこんなにも美しい音楽を奏でていたとは。合計で8分ほどのこれらの音楽を繰り返し聴くだけでも心が洗われる・・・。何て可憐な音楽よ!!

4 COMMENTS

雅之

こんばんは。

そうですか、ナディア・ブーランジェの曲はそんなに美しいですか!
未聴なので、ぜひ聴いてみたくなりました。
教えていただき、ありがとうございます。

リリの「天の空間」は、相変わらずずっと大好きです。
シューベルトの3大歌曲集に勝るとも劣らない傑作だと信じたままです。

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岡本 浩和

>雅之様
おはようございます。
ナディアの作品集、おすすめです。アマゾンでは廃盤扱いのようになってますが、下記から購入できそうです。
http://www.cadenza-cd.com/label/troubadisc.html
美しいですよ。

そもそも、3年半前にリリ・ブーランジェを教えていただいたのは雅之さんです。
こちらこそ感謝いたします。
ありがとうございます。

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