静かに、そして緩やかに、古の音楽

「前奏曲とフーガ」を聴いて、バッハとショスタコーヴィチに触れていたら、どうにもこうにも中世の音楽を聴きたくなり、久しぶりに古の音楽を聴いてみた。
クラシック音楽というものがそもそも大昔の音楽なのだけれど、我々が一般的に享受しているクラシック音楽なるものは300年前のバッハ以降のものがほとんど。それ以前のものは抹香臭くて、あるいはキリスト教の知識がいまひとつ不十分で随分長い間避けてきたが、35歳を超える頃からか実にその面白味が「わかる」ようになった。時にそれら(特にアカペラ)の聖なる響きに身を沈めるだけで随分思考が鮮明になり、心もともに浄められるのだから、古き聖なる音楽の力というのはやっぱりすごいものだと感心する。
しかしながら、より深く理解するとなると歴史をもう一度じっくりとひもとき、そして西洋地理についても知識を得、さらにはキリスト教そのものの本質を知ることが重要だろうから、そのあたりはいずれ時間ができた時にゆっくりと取り組みたいとも思っている。
そういえば若い頃はどうも西洋かぶれで、日本の文化など目もくれない自分がいたが、鶴田錦史さんを題材にしたノン・フィクションを読んだり、日本の古代史(「日本書紀」や「古事記」など)、超古代史について知れば知るほど、自ずと「和」というものに俄然興味を抱くようになり、その流れで日本の伝統音楽、雅楽などについてももっと聴いてみたくなった。
鶴田錦史さんの演奏は武満徹の「ノヴェンバー・ステップス」でしか触れたことがない。本業の琵琶の演奏についてもいろいろと聴いてみたい。好奇心がこうも広がってゆくと時間とお金の問題がどうしても生じるが、そのあたりは少しずつ解決しながらひとつひとつゆっくりじっくりと研究してゆくか・・・。
琵琶や尺八などは意外に西洋の教会音楽と通じるものがあるかも、などと空想しつつ(そういえば、海童宗祖の法竹などは何度聴いても気絶するほどの崇高なエネルギーに満ち溢れており、すべてに通じる気がするからそういう直感は間違いないように思うが)今夜のところは西洋中世音楽を。

ということで、「ザ・ヒリヤード・アンサンブルの芸術」と題するセットから1枚。

ギヨーム・デュファイ:
・ミサ「ロム・アルメ」
・ばらの花が先ごろ
・戦う教会
・うるわしき救い主のみ母
・おお、聖セバスティアヌスよ
・めでたし、トスカナ人の花
ポール・ヒリアー指揮ザ・ヒリヤード・アンサンブル

黒死病が大流行し、人口が半分近くまで減少したとされる中世ヨーロッパの悲しみの音楽。
人々が音楽に求めたものは癒しか安らぎか・・・。
ゆっくりと時が流れ、ただただ人声のハーモニーが響き渡るこの空間で一体何を思うのか・・・。言葉にならない祈り。その同じ感覚がバッハにも、そしてショスタコーヴィチにも引き継がれる。


2 COMMENTS

雅之

こんばんは。

>琵琶や尺八などは意外に西洋の教会音楽と通じるものがあるかも

そうなんですよね。
正倉院で「螺鈿紫檀五絃琵琶」
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E7%90%B5%E7%90%B6
の実物を初めて見た時の感銘が甦りました。

>黒死病が大流行し、人口が半分近くまで減少したとされる中世ヨーロッパの悲しみの音楽。
人々が音楽に求めたものは癒しか安らぎか・・・。

今朝、ブログ本文を読んで私が瞬間連想したのは、遠い中学時代に読んだ深代惇郎、絶筆の中の最後の一文。

「権力に狂奔し、怨霊におののく古代人たち、いつかもう一度 、法隆寺を訪ねてみたい」(1975・11・1)
http://www.amazon.co.jp/%E6%B7%B1%E4%BB%A3%E6%83%87%E9%83%8E%E3%81%AE%E5%A4%A9%E5%A3%B0%E4%BA%BA%E8%AA%9E-1976%E5%B9%B4-%E6%B7%B1%E4%BB%A3-%E6%83%87%E9%83%8E/dp/B000J9O30A/ref=sr_1_1?s=books&ie=UTF8&qid=1329390672&sr=1-1

ご紹介の盤は未聴です。古楽の世界をもっと学びたくなりました。

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岡本 浩和

>雅之様
こんばんは。

>実物を初めて見た時の感銘が甦りました。

僕は実物は見ておりませんが、わかる気がします。

>遠い中学時代に読んだ深代惇郎、絶筆の中の最後の一文。

深代さんの「天声人語」は僕も随分世話になりましたが、全く記憶がございません。
中学時代に読んだものを逐一憶えているというのはやっぱり驚異的です。

古楽の世界も相当に深いですね。キリがありません。

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