オーケストラ・ダスビダーニャ第19回定期演奏会

オーケストラ・ダスビダーニャを聴かずしてショスタコーヴィチを語るなかれ。
一言そんな印象。とにかくアマオケとは思えない、いやアマオケだからこそ成せる、怖いもの知らずのレッド・ゾーン振り切れまくりの(笑)白熱パフォーマンス。徹底的にショスタコ好きの方々が集結し、ショスタコに奉仕し、そして集まった数多のショスタコ好きを大いに楽しませようと果敢にチャレンジしようとする姿勢が真に神々しい。前プロの伊福部昭「日本組曲」から異常な熱気と興奮と・・・。打楽器の怒涛のような打ち込みとロールと、そして金管楽器のうねる雄叫びと・・・。心底感動した。いや、予想以上に素晴らしい(今日までの一連のショスタコーヴィチ体験が霞むほど。決して冗談ではなく)。

オーケストラ・ダスビダーニャ第19回定期演奏会
2012年3月11日(日)
すみだトリフォニーホール大ホール
・伊福部昭:管弦楽のための「日本組曲」
―Ⅰ.盆踊
―Ⅱ.七夕
―Ⅲ.演伶(ながし)
―Ⅳ.佞武多(ねぶた)
<14:46黙祷>
・ショスタコーヴィチ:交響曲第7番ハ長調「レニングラード」作品60
アンコール~
・ショスタコーヴィチ:弦楽四重奏曲第1番ハ長調作品49~第4楽章(白川悟志編曲)
・外山雄三:管弦楽のためのラプソディ
長田雅人指揮オーケストラ・ダスビダーニャ

開演前にはステージにてトロンボーン・アンサンブルによる演奏のおまけつき。
それにしてもほぼ満員という人気の高さはいかばかりか(この日は被災地から首都圏に疎開されている方々には無料で開放されたらしいからその関係者も大勢いらしたのだろうけれど)。
1曲目の伊福部から、それこそ団長白川氏がプログラムで書かれている通り「一音入魂」の壮絶なアタック。度肝を抜かれた。「頭からトップ・ギアですか!」、「最初からそんなに飛ばさなくても・・・」、いろいろ頭を過るが、ともかく指揮者、団員の想いは観客の想いとひとつになり、はじけ飛ぶ。音盤だけで聴いて楽曲の是非を判断するのは本当に難しいものだとあらためて確認。とにかくものすごい曲であることが判明した。3.11という特別な日の特別な演奏だからというのもひょっとしたらあるのだろうが、作曲者がもしも耳にしていたら何と思われたのだろう。(白川氏がこの作品を本公演の演奏曲目として採り上げるに至った経緯をプログラムに書かれている。「私は、日本人の作品で、『日本』という言葉がタイトルに入っているということこそ、3.11に演奏するのに相応しいと主張した。しかも、『盆踊』、『七夕』、『演伶(ながし)』、『佞武多(ねぶた)』の4曲から成るこの組曲を、単なる風物詩ではなく、『日本人は死者の魂とどう向き合ってきたか』を思い起こさせる深い音楽として、私は以前から、世界に誇る最高の邦楽だと思ってきた」と。納得である)

そして、休憩を終え、後半が始まるその時に午後2時46分を迎え黙祷。
いよいよ、「レニングラード」シンフォニーの登場である。70分に及ぶ大曲があっという間に終わった。アマチュアとは思えない金管の咆哮は相変わらずぶれることなく、大きなミスもなく我々にショスタコーヴィチの真髄を届けてくれる。戦火に怯えるレニングラードの市民がいかに勇気と希望をもって敵と、そして自らと闘ったか・・・。時に涙する瞬間、時に怒れる瞬間、そして喜びが訪れる。
楽曲の構成上の問題もあり、多少弛緩する瞬間、緊張が途切れる瞬間があったのは確か。しかしそれは大目に見る。そんなことはどうでも良くなる。議論に値しない。それくらいに感動させてくれた。それで十分。

だと思ったのだが、何とアンコールだと。団長白川氏がオーケストラ・アレンジしたハ長調カルテットのフィナーレ。確かに大いなる喜びに満ちていた。そして、聴き慣れた日本の俗謡があちこちに散りばめられた外山のラプソディは観客サービスか(笑)。確かにショスタコーヴィチの第3楽章途中で居眠りしていた紳士淑女もヤンヤヤンヤの大喝采だったし。(しかし僕的には正直アンコールは不要だった)

ということで、来年も是非ダスビの定期演奏会には足を運ぼうと誓った次第。
繰り返す。「最高!!!」


6 COMMENTS

雅之

こんばんは。

ダスビの演奏を聴き、随所で鳥肌が立ちました(笑)。噂通り、いや噂以上に凄かったですね、アマオケの鑑だと思いました。

東日本大震災から1年後の3月11日に、一生忘れられないであろう貴重な音楽体験ができました。帰宅してからも、まだ興奮の余韻に浸っています。今回お誘いいただいたこと、真に感謝しております。

それにしても岡本さんは今年、これからインバル&都響、ラ・フォル・ジュルネと、まだまだショスタコ体験が続くのですね、羨ましい限りです(笑)。

※ところで、昼食時に話題になった、バレエ「くるみ割り人形」の映像ソフトの件ですが、帰って調べたら、英国ロイヤル・バレエ団のDVDが面白そうですね。
http://www.amazon.co.jp/%E8%8B%B1%E5%9B%BD%E3%83%AD%E3%82%A4%E3%83%A4%E3%83%AB%E3%83%BB%E3%83%90%E3%83%AC%E3%82%A8%E5%9B%A3%E3%80%8C%E3%81%8F%E3%82%8B%E3%81%BF%E5%89%B2%E3%82%8A%E4%BA%BA%E5%BD%A2%E3%80%8D-%E5%85%A82%E5%B9%95-DVD-%E8%8B%B1%E5%9B%BD%E3%83%AD%E3%82%A4%E3%83%A4%E3%83%AB%E3%83%BB%E3%83%90%E3%83%AC%E3%82%A8%E5%9B%A3/dp/B00430HKSS/ref=sr_1_2?s=dvd&ie=UTF8&qid=1331471852&sr=1-2
とても評判がよい吉田都の舞い、私もぜひ一度確認したくなりました。BD版でも発売されると、もっと欲しくなるのですが・・・。

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岡本 浩和

>雅之様
こんばんは。
いやあ、本当に鳥肌ものでしたね。
感動のしっ放しでした。

>まだまだショスタコ体験が続くのですね、羨ましい限りです

前にも書いたかもしれませんが気が狂いそうです(笑)。
インバルの4番まではダスビの余韻に浸ろうかとも思っております。

ところで、「くるみ割り」の映像の件早速にありがとうございます。
とりあえず先ほどHMVで激安のソフトを見つけまして。
同じ、ピーター・ライトの振付ですが、ロジェヴェン指揮の30年近く前のものです。
http://www.hmv.co.jp/product/detail.asp?sku=4933184

比較視聴すると面白そうですね。

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