抜け切っている透明感と脱力感

音楽の力というものを本日もまざまざと見せつけられた。
八王子市生涯学習センター主催市民自由講座「クラシック音楽入門講座&ミニコンサート」を無事終えた。小雨降る中200名もの方々にご参加いただいた上、しかも終演後には大勢の方々から元気の出るお言葉をいただき一層感謝感激。こちらこそ本当にありがとうございました。
「もっと音楽について知りたい」、「どうやったらもっと楽しめるのか」、そんな声が聞こえてきそうな空気だった。音楽を聴くのに専門的な知識はいらない。ただひたすら耳にするという聴き方も大いにあり。ただし、ただ漫然と触れるのではなく、音楽史の流れを少しだけ勉強したり、構造や形式について教わったり、作曲家その人に興味をもって調べるだけで対象物に対しての「理解度」が全く違ってくるもの。少なくとも僕の30数年に及ぶ経験からそのことは間違いないといえる。ひとりでも多くの方にクラシック音楽の素晴らしさをお伝えしたいとますます思うようになった。

そんなわけでここのところ滅法忙しい。やるべきこと満載。
昨日までショスタコ漬けだったこともあり、本日の講座で何となく音楽関係の仕事(プライベートも)については一段落ついたように思うので(実に2週間後からまた墨田区の第2期がスタートするのだけれど・・・笑)、今夜はクラシックは聴かない。

菊地成孔+大谷能生による「マイルス研究」を読み、マイルス・デイヴィスの生き方をより詳細に知るようになってからマイルスの、いや、ジャズの聴き方そのものが変わった。例えばモードがどうたらリディアン・クロマティックがどうたら、そんな小難しい話や専門的な話はもちろん一切できないが、それでもマイルスの進化が、ジャズ音楽の流れが以前よりは手に取るようにわかるようになってきた(残念ながら若い頃と違ってそこに埋没集中して聴く時間と根性がないから聴き込みは全く足りないのだが)。

ジャズ史に燦然と輝く名盤。マイルスをいよいよメジャーの世界に押し上げるきっかけとなったアルバム。

Miles Davis:’Round About Midnight

Personnel
Miles Davis(trumpet)
John Coltrane(tenor sax)
Red Garland(piano)
Paul Chambers(bass)
“Philly Joe” Jones(drums)

何だろう、この落ち着き様は・・・。
それに、メンバーの一人一人がとても楽しんでセッションに臨んでいるんだということが録音からもビンビン伝わってくる(コルトレーンもまだまだ随分大人しくて、完全調和しているところが実に素敵)。

何て平和なんだろう。
何て優雅なんだろう。
地に足が着きながら抜け切っている透明感と脱力感・・・。
音楽の力はやっぱり凄い。


3 COMMENTS

雅之

おはようございます。

ジャズ、特にマイルス・デイヴィスって、基本的に夜の音楽ですよね。それも都会の夜。

ご紹介の盤を車の中で聴いても(一応車載HDDに入れている)、晴天の朝や昼はまったくといっていいほど雰囲気出ないし、これほど音楽と景色がそぐわないものはないです(雨の日はまだ合っているかも)。

音楽は、聴く場所、時間帯、季節、天気、気温、湿度などによっても感じ方が一変するという、これは好例ですね。

ジャズは圧倒的に勉強不足の上、朝で気分も乗らなきゃ、もうコメント不可能(笑)。

どなたか、岡本さんのブログを愛読されているもっと適任の方、よいコメントをお願いします!!

返信する
岡本 浩和

>雅之様
おはようございます。
特にこのアルバムはタイトル通り夜の音楽ですね。
おっしゃりたいことわかります。
朝では全く乗れません(笑)。

とはいえ、「気分」を横に置いておくと、順番にマイルスを聴いていくと、彼なりのチャレンジや進化はもちろん常にあるものの、1950年代後半のこの頃が実はもっとも「斬新」なように感じます。怖いもの知らずというか。
その意味ではショスタコの4番に通じます。
ショスタコがあのまま4番を初演していたらどうなっていたんでしょうね?
歴史が180度変わったかも。興味深いです。

返信する

コメントを残す

このサイトはスパムを低減するために Akismet を使っています。コメントデータの処理方法の詳細はこちらをご覧ください

アレグロ・コン・ブリオをもっと見る

今すぐ購読し、続きを読んで、すべてのアーカイブにアクセスしましょう。

続きを読む