クレーメル&アルゲリッチのシューマン&バルトークを聴いて思ふ

kremer_argerich_berlin_recital聴衆の反応でこのコンサートがどれほど美しく感動的だったかが手に取るようにわかる。
バルトークとシューマンのソロ作品を同作曲家のデュオ作品でサンドイッチするという画期的プログラム。

一見、脈絡のない構成に見えて実に意味深い。作曲家に共通するのは、いずれもピアニストであり、ピアニストの愛する妻があるということだ。そして、作品の多くは伴侶のために書かれている。

生真面目で融通が利かなかったという性格も同じかも。シューマンの作品はどこかにそういう堅苦しい側面を反映する。一方のバルトークのものは彼の性格そのもの。

アルゲリッチの「子どもの情景」に卒倒した。第1曲「見知らぬ国より」から次元が違う。音の一粒一粒にたとえようのないニュアンスが込められ、聴く者を即座に魅了する。特に、第7曲「トロイメライ」以降は、まるで実際に夢の中にいるようで、このコンサートにおけるひとつのクライマックスを築く。あまりに神々しい(直後の聴衆の拍手喝采がそのことを如実に示す)。

ベルリン・リサイタル
・シューマン:ヴァイオリン・ソナタ第2番ニ短調作品121
・バルトーク:無伴奏ヴァイオリン・ソナタSz.117
・シューマン:子どもの情景作品15
・バルトーク:ヴァイオリン・ソナタ第1番Sz.75(1921)
アンコール~
・クライスラー:愛の悲しみ
・クライスラー:美しきロスマリン
ギドン・クレーメル(ヴァイオリン)
マルタ・アルゲリッチ(ピアノ)(2006.12.11Live)

ユーディ・メニューインの委嘱による無伴奏ソナタについてのバルトークの言。

母さんとメニューイン宅の夕食に招かれた。まだ完全に弾けてはいなかったが、「無伴奏ヴァイオリン・ソナタ」を聴かせてもらった。修正すべき点がたくさん見つかり(私にとって)、本当に良い機会だった。4時間も語り合った。問題点はすでに改善し、難しい曲には違いないが、それでもスムーズに演奏できる。
1944年10月31日付、ペーテルへの手紙P147

11月26日、メニューインがニューヨークのリサイタルで、私の「無伴奏ヴァイオリン・ソナタ」を披露した。彼のためにアッシュヴィルで書いたものだ。見事な演奏だった。
1944年12月5日付、ペーテルへの手紙P148

小康状態にあり、音楽創造的にも充実した、生涯でもおそらく群を抜くだろう時期。無伴奏ソナタはある意味バッハを超える。一挺の弦楽器が奏でる「音世界」はまさに「ミクロコスモス」であり、古今のあらゆる奏法を駆使した傑作。それをクレーメルが満を持して披露するのだから悪いはずがない。録音からも十分にその「すごさ」が伝わる。

円熟期の佳作第1ソナタも聴きもの。ここではアルゲリッチの伴奏がバルトークを一層雄弁に語る(僕の耳が悪いのか、アルゲリッチのピアノがとにかく前面に出て聴こえるのである)。第1楽章の頭からアルゲリッチ前面・・・(笑)。

 


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