人の魂というのは、どうにも土俗的な響きによって癒される

リーザ・デラ・カーザとラヴィ・シャンカールが相次いで亡くなった。
かたや93歳、かたや92歳という天寿を全うして。活動したジャンルはまったく違う二人だが、僕にとってはいずれも天才を陰で支えた「匠」としての印象が強い(デラ・カーザの、フルトヴェングラー最晩年の「ドン・ジョヴァンニ」でのドンナ・エルヴィラを演じる姿がどういうわけか真っ先に浮かぶ。この映像はやっぱり僕にとって相当な衝撃だったから)。
脈絡なくふと思ったことだが、職人というのは皆長生きだ。一方で、天才というのは短命。
音楽史上でいうだけでも、モーツァルトやシューベルト、あるいはショパンというのは30代で逝っている。本当に生き急ぐように数多くの作品をそれぞれの分野に残しながら。
そして、少なくとも現代において僕が触れた「職人気質」の音楽家は皆一様に死ぬまで舞台に立ち続け、歳を重ねる毎に神懸った演奏を繰り広げる技をもった人たちだった。朝比奈隆然り、ギュンター・ヴァント然り。

まぁ、こんなのは偶然のことだろうけれど、僕自身が認識する、あるいは愛好する音楽家をカテゴライズした時にそういうところが見えてきたものだから、思わず唸って膝を打っただけの話。あくまで独断と偏見ということで。

ちなみに、今、僕の前で鳴るのはピーター・ガブリエルの6枚目のソロ・アルバム”US”に参加したゲスト・ミュージシャンたちの楽曲を集めたコンピレーション・アルバムなのだが、昔からこういう第三世界的な「新しい」音楽を耳にするだけでのけ反ってしまう自分がいた。発表から既に20年近く経過しているのに「音」はまだまだ新しい。

PLUS from US

Obiero  Ayub Ogada
Keep On Marching  The Meters
Oasis  Peter Hammill
Pine Tree and On The Street  Dmitri Pokrovsky Ensemble
Best Friend, Paranoia  William Orbit
Lone Bear  Tony Levin
Morecambe Bay  Alex Gifford
Down By The River  David Rhodes
Triennale  Brian Eno
Rose Rhythm  Doudou N’ Diaye Rose
Silence (Remix)  Manu Katche
Baladi We Hetta  Hossam Ramzy
Dreams  Shankar ‘n’ Caroline
Suheyla  Kudsi Erguner
El Conquitador  Daniel Lanois

このアルバムには多彩なミュージシャンたちの多様な音楽が収録される。ピーター・ハミル(”Oasis”)がいる。いかにもというトニー・レヴィンの作品(”Lone Bear”)もある。デイヴィッド・ローズ(”Down By The River”)もだ。それにブライアン・イーノ(”Triennale”)も。で、何よりシャンカールの歌と演奏(ダブル・ヴァイオリンとカンジラというインド太鼓)。タイトルの通り、聴いているうちはまさに夢の最中。

人の魂というのは、どうにも土俗的な響きによって癒される。あるいは洗練された調べによっても。最高の「瞬間」がここにはある。
ピーター・ガブリエルの仕事はいつどんなものも真に素晴らしい。


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