
第2次世界大戦の最中、指揮者のユージン・グーセンスが、兵士を鼓舞する重要な、そして有効なファンファーレをアメリカの作曲家に依頼し、18のファンファーレが生み出された。その中の一つが、アーロン・コープランドの「市民のためのファンファーレ」である。
実演に触れると、不思議に魂を刺激される傑作である。ましてや金管群のテクニックが優れているオーケストラの演奏ならばなおさら。コープランドの代表作「エル・サロン・メヒコ」について、「私は音楽を直接聴いたのではなく、メキシコの人たちの精神に魅了されたのだ。そして、その精神が自分の作品に注入できるように作曲したのだ」と語っているが、音楽によって人々の心を掴むのに長けていた。亡くなって早30年余りが過ぎるが、彼の音楽は今も生々しく、そして感動的に響く。
高原の黄昏時、久しぶりにエマーソン、レイク&パーマーによる”Fanfare for the Common Man”を聴いた(”Works”収録)。原曲以上に先鋭的で刺激的なこのロック・バージョンは、同様に人々の魂を捉え、決して廃れることがないだろう。
キース・エマーソンの弾くキーボードによる主題のかっこ良さ、そして、それを支えるグレッグ・レイクのベースとカール・パーマーのドラムスの連携に言葉を失う。1977年の映像は、おそらく真冬に収録されたものだろう。3人は厚手の服装で、吐く息は白く、しかし、その熱演によって周囲の空気は俄然燃えたぎっている様子が手に取るようにわかる。
キース、グレッグが鬼籍に入った今や奇蹟のトリオの復活はない。しかし、ロック史上屈指のバンドの名演奏をこうやっていつどこでも自由に観ることができるのは大変有難い。
・Emerson, Lake & Palmer:Fanfare for the Common Man (1977)
Personnel
Keith Emerson (Yamaha GX1 polyphonic synthesizer)
Greg Lake (8-string Alembic bass)
Carl Palmer (drums, percussion)