ハスキル シューベルト ピアノ・ソナタ第21番D960(1951.6録音)ほか

クララ・ハスキルのシューベルトを聴いた。
ザルツブルク音楽祭での、ライヴならではの疵を持つ、しかし、生命力に溢れる、枯淡の実演には敵わないまでも、いかにも彼女らしい味わいがそこにもあった。

フランツ・シューベルト最晩年の、いつ終わるとも知らぬ、果てしなき旋律の宝庫は、透明感の塊のような「白鳥の歌」然としていて、ある意味手強い音楽だけれど、美しさにかけては人類の至宝ともいえる逸品だ。

ハスキルのピアノは訥々と歌う。

・シューベルト:ピアノ・ソナタ第21番変ロ長調D960(1951.6録音)
・ベートーヴェン:ピアノ・ソナタ第17番ニ短調作品31-2「テンペスト」(1960.9録音)
・ベートーヴェン:ピアノ・ソナタ第18番変ホ長調作品31-3(1960.9録音)
クララ・ハスキル(ピアノ)

ヴァルター・ゲオルギーはこのソナタをして次のように語っているそうだ。

シューベルトのピアノ作品中、王冠のきらめいているのは、何よりも“変ロ長調ソナタ”であり、ベートーヴェン以後に書かれた最も美しいソナタである。
(Walter Georgie, Klaviermusik, 1976, Atlantis, p.281)
「作曲家別 名曲解説ライブラリー17 シューベルト」(音楽之友社)P181

シューベルトの孤高の境地を示す最高の音楽を、ハスキルは悲しく、自由自在に奏でる。
奇を衒わない、純粋無垢な、それでいて重い音楽を、これほど縦横に語れるピアニストが他にあるのかどうか。ただし、6年後に奏でられたライヴの方が素晴らしいと僕は思う。

ベートーヴェンの「テンペスト」も素晴らしい。一層素晴らしいのは第18番変ホ長調!

過去記事(2017年8月15日)
過去記事(2008年11月7日)

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