Lou Reed “Metal Machine Music (The Amine β Ring)” (1975)

醜い魂の芸術。—秩序だった、倫理的に均衡を保って漂っている魂だけが芸術の中で自分の考えを述べてもよいと要求するならば、人は芸術にあまりにも狭い限界を弾いているのである。造形美術においてと同様、音楽や詩においてもまた、美しい魂の芸術と並んで醜い魂の芸術がある、そして芸術のもっとも強烈な作用、断腸の思い、石をも動かし動物をも人間にするということは、おそらく後者のような芸術のところでこそもっともよく成功してきたのである。
池尾健一訳「ニーチェ全集5 人間的、あまりに人間的I」(ちくま学芸文庫)P185-186

それは醜い魂の芸術の最右翼だろうか。
ルー・リードが果敢に挑戦した1時間超に及ぶノイズを主とした(?)音楽の妙。
誰もが最低の評価しか与えない、史上最悪のアルバムだというレッテルを貼られているが、果たしてここから得るものはないのか?

興味深い動画を見た。
Youtuberみのの最終結論は、「どこかで音楽を聴くことを拒絶する体験。それを絶対味わうことになる作品」だとした。それは、少なくともこのアルバムのアナログ盤、それも海外盤においてはザ・ビートルズの「サージェント・ペパーズ」同様、エンドレスにループするよう制作されており、自ら強制的に止めないと終わってくれないという、ルー・リードらしい実に計算された代物なのである。
芸術は大衆を拒絶するとでも言いたげなルーの真骨頂。僕はとても納得した。

・Lou Reed:Metal Machine Music (The Amine β Ring) (1975)

リリースから半世紀近くのときを経ても語られるのは、ルー・リードの偉大な発想のおかげだろうか。ヴェルヴェッツは素晴らしい。「トランスフォーマー」だって「ベルリン」だって知る人ぞ知る(?)傑作だ。そういう時の人でもあったルーが、いよいよ真逆の世界に触れたとき、こういう方法もあったのかと、わかる人にはわかったはず。

2枚組全篇にわたっていわゆるノイズのみ。凄い作品だと僕は思う。
耳を澄まして聴いてみよう。


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