重厚な浪漫。
クラウディオ・アラウの遺した、ベートーヴェンのピアノ協奏曲たち。
そのすべてが意味深く、素晴らしい。
中でも、サー・コリン・デイヴィス指揮シュターツカペレ・ドレスデンとのものは、ベートーヴェンの真髄を見事に表現する、稀代のセットだと僕は思う。
ベートーヴェンの真髄とは何たるや?
ひとつ、常に革新的であるということだ。
「さらに美しい」ためならば、破り得ぬ(芸術的)規則は一つもない。
~ロマン・ロラン著/片山敏彦訳「ベートーヴェンの生涯」(岩波文庫)P135
そして、歓喜に達し、皆を喚起に導くことだった。
音楽は、一切の智慧・一切の哲学よりもさらに高い啓示である。・・・私の音楽の意味をつかみ得た人は、他の人々がひきずっているあらゆる悲惨から脱却するに相違ない。
(1810年、ベッティーナに)
~同上書P135
後年の思想断片ではあるが、彼の内側には、本より蠢いていた思考なんだろうと思う。
ウィーンに出、新進気鋭のピアニストとして意気揚々と自作の協奏曲を携え、方々で演奏して回った青年時代の傑作たちが、最晩年のアラウの老練の解釈によって意味深く、そして美しく奏される様子に言葉がない。最高だ。
アラウ&バーンスタインのベートーヴェン第4協奏曲(1976.10.17Live)ほかを聴いて思ふ アラウ&コリン・デイヴィスのベートーヴェン第3&第4協奏曲を聴いて思ふ アラウ&コリン・デイヴィスのベートーヴェン「皇帝」ほかを聴いて思ふ ふと感じたベートーヴェンの愛