
フルトヴェングラーがレコーディングに否定的であり、消極的だったのは有名な話。
しかし、戦後、楽劇「トリスタンとイゾルデ」のプレイバックを聴き、その見解を改めたのだという。
かの楽劇「トリスタンとイゾルデ」は、録音も優秀で、かつ空前絶後の名演奏として今なお支持される、最高の記録だと思う。
そして、1930年代にフルトヴェングラーが録音したワーグナーを聴いて、彼の解釈の基本が変わらず、既にデモーニッシュな、あるいはエロティックな、人間存在の根源にまで到達するような愛と死を体現する、必聴のレコードだと感心する。
いずれもベルリン王立アカデミー高等音楽院でのセッション録音。
(ベルリン高等音楽院は、1910年から13年まで山田耕筰が学び、交響曲「かちどきと平和」を作曲した王立の学校だ)
(この年、フルトヴェングラーは、ウィーン・フィルの常任を辞職する)
湯浅卓雄指揮アルスター管の山田耕筰「かちどきと平和」(2001.6録音)ほかを聴いて思ふ
何よりワーグナーは絶品。
「ローエングリン」前奏曲の、後の「パルジファル」につながる敬虔な、神聖な響き。
「ローエングリン」の全曲レコードは、ユラニアの長時間盤5枚に入っているだけである。前奏曲は非常に有名でもあり優れたものだが、「第3幕の前奏曲」はビクターのトスカニーニが優れて居り、ポリドールのフルトヴェングラー指揮の「第1幕の前奏曲」も銘品の一つだろう。
~あらえびす「クラシック名盤楽聖物語」(河出書房新社)P202
そして、官能の極致である「トリスタンとイゾルデ」の、抜粋ながらそこにフルトヴェングラー芸術のすべてが込められていると言っても過言でない感動。
いずれも1世紀近く前の録音だが、いまだにこの魔性を超えるものはないといえる。
「前奏曲」と「イゾルデの愛の死」と一緒にしたのが、フルトヴェングラー指揮、ベルリン・フィルハーモニック管絃団で、ポリドールにもコロムビアにも入っている。フルトヴェングラーの「トリスタンとイゾルデ」は天下一品の称があり、どちらも素晴らしい。吹込はコロムビアの方がいくらか新しい筈である。
~同上書P203
こういう録音が辛うじて残されていることの奇蹟に感謝だ。
SP録音期のフルトヴェングラー
