フェラス シューリヒト指揮ウィーン・フィル ブラームス ヴァイオリン協奏曲ニ長調作品77(1954.4録音)

ヨハネス・ブラームス、カール・シューリヒト、そしてクリスチャン・フェラス。
デッカへの録音を久しぶりに聴き、モノラルながら録音の良さも相まって、稀代の協奏曲の名演奏に僕は癒された。
管弦楽の提示部は想像以上に急いている印象があり、心拍数が(ほんの少し)上がるのだが、テンポは徐々に安定し、フェラスの独奏が奏でられる頃には、とても落ち着いた、絶頂期のブラームスの仕事の本懐を見事にとらえた表現になる(思わず唸る瞬間が頻発する)。

シューリヒト&ウィーン・フィルのブラームス交響曲第2番ほかを聴いて思ふ シューリヒト&ウィーン・フィルのブラームス交響曲第2番ほかを聴いて思ふ

ブラームスとヨーゼフ・ヨアヒムの対話。

「だがヨハネス、ビューローは、作品を構築する手腕の点で、君は彼らより上だと断言した詩、私も同感だ。君の交響曲の構造は交響的作品の中で並ぶものがなく、《交響曲第4番》の終楽章は、聴くたびにいつも私を驚異と感嘆の念で満たす。それに《ピアノ協奏曲第2番変ロ長調》の暖かさと色彩はどうだ! ベートーヴェンの《第5番変ホ長調『皇帝』》にお敬服する。ピアノの扱い方が君よりも勇壮で、かつ高度な技巧を要求するものになっている。しかし私は、君の《変ロ長調》に軍配を上げる! あらゆるピアノ協奏曲の中で最高の作品だと思う。そうだ、本来これは協奏曲というより、ピアノのオブリガート付交響曲と呼んだ方がふさわしいが、いずれにせよ今19世紀の傑出した交響的作品の一つだ」。
「私の《ヴァイオリン協奏曲》も協奏曲というよりは交響曲だ。ヨーゼフ、ただもちろんピアノは自分の楽器なので、ヴァイオリンよりはよほどうまく扱える。だがヨーゼフ、独奏ヴァイオリンの楽節について、君のいくつかの助言を活かせなかったのは残念だ。あの音楽から何物をも損ねず、もっと奏きやすくできたはずだった」。
「独奏ヴァイオリンの扱い方に難点があるとはいえ、この作品は成功し、時間と共にますます人気が出てくるだろう。偉大で霊感を与える音楽だからだ。ヨハネス、私はこう心得ている。モーツァルトやベートーヴェンは、君よりも迅速でよどみなく流れるような旋律を持っているが、君の主題に関する創意の優秀さについては言うまでもない。人に涙させる以上に大きな試金石はなく、私は何度、聴衆の目に宿る涙を目撃したことか。《変ロ長調ピアノ協奏曲》のアンダンテで、チェリストが思い入れたっぷりな音色でオブリガートを奏く箇所だ。

アーサー・M・エーブル著/吉田幸弘訳「大作曲家が語る音楽の創造と霊感」(出版館ブック・クラブ)P101-103

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ブラームスの存命中こういう会話が行なわれており、しかもそれが記録として残っていたことが奇蹟だ。果してベートーヴェン以上かどうかはあえて議論を避けることにしても、ブラームスの協奏曲群が傑作であることには違いない。

録音当時、フェラスはわずか21歳だった。デッカとしては、フェラスを売り出すための策だったそうだ。

デッカはこの録音を、若きフランス人ヴァイオリニストのプロモーションとして活用するつもりだった(この時フェラスは21歳)。当時、バルナール・ガヴォティはフェラスについて「フェラスはドイツと南アメリカのホールを満杯にした」と語っている。賢明なガヴォティは、彼を「未来のフランスの才能ある人物」と見ていた。シューリヒトはこの企画に喜んで協力した。この録音は今日においても、ブラームス作品で最高の演奏のひとつに挙げられている(CDは、2003年にテスタメントによって編集されている)。
ミシェル・シェヴィ著/扇田慎平・塚本由理子・佐藤正樹訳「大指揮者カール・シューリヒト―生涯と芸術」(アルファベータ)P286

残念ながらフェラスは49歳で投身自殺を図り、1982年9月に亡くなってしまう。
(いかに偉大な音楽家であろうと、自死はだめ)
(しかし、彼のブラームスを聴くと、雄渾さよりはどこか繊細さを醸す音楽に、なるほど傷つきやすい性格だったのだろうと想像できる。特に、クライスラー作のカデンツァにそういう印象を受ける)

・ブラームス:ヴァイオリン協奏曲ニ長調作品77
クリスチャン・フェラス(ヴァイオリン)
カール・シューリヒト指揮ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団(1954.4.19&20録音)

楽友協会大ホールでのセッション録音。
当時のウィーン・フィルの首席であったハンス・カメシュのオーボエやレオポルト・ウラッハのクラリネットの掛け合いが聴ける第2楽章アダージョの憂愁と慈愛の音色に心が動く。

同様に、終楽章アレグロ・ジョコーソ,マ・ノン・トロッポ・ヴィヴァーチェ—ポコ・ピウ・プレストの勢いと推進力はシューリヒトの本意であり、そこに見事に着け、ブラームスの思念を表現する若きフェラスの技量にまた感動する。

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