神無月に

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さて、はや10月である。昨年も今頃から11月のコラボコンサートの告知を始めたように記憶するが、今年は「早わかりクラシック音楽講座」の特別コンサートという位置づけということと、愛知とし子が果敢なプログラムに挑戦するということもあり、気合いを入れて集客し、たくさんの方々に聴いていただきたいと考えている。ショパン&シューマンの生誕200年という記念すべき年のラストを飾るような素晴らしいコンサートにできれば・・・、と思う。
10月1日は、いわゆる衣替えの日であり、大学4年生諸君にとっては内定式の日である。この時期まだまだ内定が出ていないという若者もたくさんいるそうだが、リクナビやマイナビといういわゆる就職情報サイトが今日から本格的に稼働を始め、いよいよ大学3年生が動き出す、そういう日でもある。表参道の某大学で「履歴書の書き方」をテーマにした講義をもったが、みな真剣な眼差しで言葉ひとつも聴きもらすまいと懸命だ。「備えあれば憂いなし」、とにかく1日でも早く行動を具体的に起こしていくこと、それだけである。
しかしながら、多くの学生がマニュアル的に物事を考える癖があるのにはいささか閉口。要は読み手、聴き手がわかりやすく、理解できるように、かつ印象に残るように書けばいいのに。だからマニュアル的に考えるなと忠告するものの、そのこと自体がどうやらなかなか腑に落ちないよう。なかなか難しい。

ところで、2010年のクラシック音楽界はショパンやシューマンの話題で小じんまりながら埋め尽くされたと思うが、一方ベートーヴェンとほぼ同時代に活躍したイタリアの作曲家ルイジ・ケルビーニの生誕250年であることにはあまり触れられないように思う。ケルビーニという作曲家は現代でこそいくつかの限られた作品でしか知られていないが、生前はベートーヴェン以上にメジャーだったということから考えても、じっくりとその音楽に身を寄せる価値は十分にある(そういう僕も長いクラシック音楽鑑賞歴の中で、フルトヴェングラーの指揮した歌劇「アナクレオン」序曲やマルケヴィッチの指揮するレクイエムを耳にしていたくらいで、ケルビーニに関して云々するほどの知識は持ち合わせていなかった)。

ケルビーニのミサ曲を中心に収めたボックス・セットを手に入れ、先日から少しずつ聴いているが、いくつもの鎮魂曲のほか、中にはホルンと弦楽のためのソナタ第2番などという隠れた名曲も収録されており、これがまた実に美しく、これからの秋の夜長に相応しい音盤たちだろうからせっかくなのでその中の1枚をじっくり聴いてみることにする。

ケルビーニ:
・レクイエムニ短調
アンブロジアン・シンガーズ
リッカルド・ムーティ指揮ニュー・フィルハーモニア管弦楽団
・演奏会序曲
・ホルンと弦楽のためのソナタ第2番ヘ長調
バリー・タックウェル(ホルン)
サー・ネヴィル・マリナー指揮アカデミー・セント・マーティン・イン・ザ・フィールズ

男声合唱によるニ短調のレクイエムは1836年に作曲されたケルビーニの最後のレクイエムである。教会のミサで女性が歌うことを禁じる因習が残っていた当時、作曲者は自身の葬儀のために男声だけのレクイエムを書こうと考えたそうだ。

「怒りの日」などはモーツァルトのそれに似たような印象を受けるが、モーツァルトのものが未完の作品で、「怒りの日」自体が厳密には彼の筆によるものではないことを考えると、ことによるとモーツァルト以上の才能の持ち主だったのではないかという錯覚すら覚える(もちろんそんなことはないのだろうが・・・)、さすがに「老練の極み」の傑作だと僕は思う。

いずれにせよ、ケルビーニの作品はもっと演奏されるべきだろうし、もっと聴かれるべきだ、そんな風に思えるセットである。

さて、もう少しじっくりとケルビーニの音楽に身を委ねるか・・・。


2 COMMENTS

雅之

おはようございます。
ケルビーニの二つの「レクイエム」、モーツァルトへの「リスペクト」や、ベートーヴェンに与えた影響が、俄然気になりだして聴き直してみたくなってきました。岡本さんの、ニ短調についての本文が頭に残っていたところ、例によって、こちらもいつも勉強させていただき感謝している、「おやじの部屋Ⅱ」のハ短調についての記事を読んだから。
http://www.ne.jp/asahi/jurassic/page/oyaji2/oyaji_97.htm#cherubini
ありがとうございます。

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岡本 浩和

>雅之様
おはようございます。
こちらのサイトは勉強になりますよね。
僕の方こそいつもご紹介ありがとうございます。

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