チッコリーニ サティ 4つのオジーヴ(1985.1録音)ほか

風変わりな詩人。

眠ってはいけない、眠れる美女よ
お聴き! あなたの恋しい人の声を
かれは リゴードン舞曲を つま弾いている
かれは どんなに あなたを愛していることか!
かれは詩人なんだ

エリック・サティ/秋山邦晴・岩佐鉄男編訳「卵のように軽やかに」(ちくま学芸文庫)P219

「朝の歌」に込められた心の叫び。エリック・サティの内心は、自身の音楽に対する自負でいっぱいだったことだろう。

サティ様、
私は8年来、鼻茸を患い、さらに併発した肝臓病とリューマチにも苦しめられてきた者でございます。
それがあなた様の《オジーヴ》を聴いてからというもの、病状は目に見えて好転し、《ジムノペディ第3番》を4,5回用いましたら、すっかり治ってしまいました。
エリック・サティ様、私が得ましたこの証を、どうぞご自由にお役立てください。
とりあえず御礼まで
プレシニー=レ=バレイエットの日雇い労働者

~同上書P127

自作自演は、何だか滑稽だが、これこそ高踏詩人サティの成せる業。
実際、アルド・チッコリーニの奏する「オジーヴ」を聴いて、そのアンニュイな音調に、僕は気持ちが一層明るくなった。病は気から。好転だ。

サティ:
・4つのオジーヴ(1985.1.7,9,10録音)
・ばら十字団の最初の思想(1985.1.7,9,10録音)
・ばら十字団のファンファーレ(1985.1.7,9,10録音)
・ナザレ人の第1の前奏曲(1985.1.7,9,10録音)
・ナザレ人の第2の前奏曲(1985.1.7,9,10録音)
・エジナールの前奏曲(1985.1.7,9,10録音)
・ゴシックの舞曲(1985.1.7,9,10録音)
・天国の英雄的な門の前奏曲(1985.1.7,9,10録音)
・祈り(1985.1.7,9,10録音)
・ヴェクサシオン(1985.1.7,9,10録音)
・貧しい者の夢(1984.1.18録音)
・世俗的な豪華な唱句(1986.5.16録音)
アルド・チッコリーニ(ピアノ)

「ナザレ人の前奏曲」のような、サティらしい、エキゾチックな、謎の、不穏な(?)響きが僕は好き。チッコリーニはサティに思念を込める。

詩人は 古びた塔に閉じこめられている
風が吹く
詩人は瞑想する
       そんな素振りもみせずに

~同上書P220

俗世間と隔離されねば良いものは生まれると言うかの如し。
サティの音楽は瞑想の裡に生まれたものだろう、それがゆえの開放が、外交がある。
チッコリーニの弾く「ヴェクサシオン」の瞑想には、言葉にならぬ香気がある。

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