
10年ほど前のものだが、大谷能生×菊地成孔がジョン・コルトレーンについてざっくばらんに語っている動画を見つけた。
これが実に的を射たもので、とても面白い。
そもそもコルトレーンは、ベートーヴェンなどと同じで、同時代にも後世にも神格化されてしまった存在なんだという。
(この比較は個人的には違和感があるが)
そのことが、彼の心身にプレッシャーを与えてしまったのだと。
もちろんジャンキー経験者だったことが肝臓に負担をかけたことは間違いない。しかし、信者体質であるのに、教祖として祭り上げられてしまった事実が、ナイーヴな彼の精神を圧迫してしまったのだと彼らは言うのだ。
セロニアス・モンクやマイルス・デイヴィスを師と仰ぎ、バンド活動していた頃の彼は最も輝いていた。あるいは、エリック・ドルフィーが横にいて、切磋琢磨できていたときもそうだ。




コルトレーンの信者体質は終わることがなかった。
彼はいつもグル(導師)を求めていた。一たびグルから離れると途方に暮れ、次のグルを探し求めた。常にメンターを求めたコルトレーンは、名作「至上の愛」以降は、ともかくいろいろな方法にチャレンジしたものの、そのお陰でファンにも理解されなくなっていく。
(自身の体質に合わない方法を、周囲に乗せられやってしまったようなものだ)
(タモリさんはコルトレーンが嫌いだとおっしゃっていたが、そういうところが肌に合わないのだろうと思う)

ビ・バップからモードへの転換は、マイルスとコルトレーンの功績だった。
ただし、マイルスがクールに転換したのに対しコルトレーンはあくまでホットだった。結局そのことがフリー・ジャズへと向かわせ、挙句はギャラクティック・ソウルへの入口に彼を誘ってしまったのである。ここで、コルトレーンにお迎えが来る。結論、(時代が追いついておらず)彼には宇宙船が迎えに来なかったのだ。その意味で確かに彼は殉教者だ。
(そもそもスピリチュアルをリアルにやろうとしたことに無理があった)

結局、インパルスの頃ではなくブルーノートの頃のジョン・コルトレーンが一番だったというフリークも多い。ただし、個人的にはインパルスの初期は最高だと思う。
ちなみに、菊地さんも大谷さんも、”Africa / Brass”について褒め称えている。
やっぱりここではエリック・ドルフィーが良い仕事をしている。

・The John Coltrane Quartet:Africa / Brass (1961)
Personnel
John Coltrane (soprano saxophone, tenor saxophone)
McCoy Tyner (piano)
Reggie Workman (bass)
Elvin Jones (drums)
Orchestra conducted by Eric Dolphy
Orchestra on GREENSLEEVES;
Booker Little (trumpet)
Freddie Hubbard (trumpet)
Julian Priester (euphonium)
Charles Grennlee (euphonium)
Julius Watkins (French horn)
Donald Corrado (French horn)
Bob Northern (French horn)
Jimmy Buffington (French horn)
Robert Swisshelm (French horn)
Bill Barber (tuba)
Eric Dolphy (alto saxophone, flute, bass clarinet)
Garvin Bushell (piccolo, reeds)
Pat Patrick (baritone saxophone)
Orchestra on AFRICA and BLUES MINOR;
Booker Little (trumpet)
Britt Woodman (trombone)
Carl Bowman (euphonium)
Julius Watkins (French horn)
Donald Corrado (French horn)
Bob Northern (French horn)
Robert Swisshelm (French horn)
Bill Barber (tuba)
Eric Dolphy (alto saxophone, flute, bass clarinet)
Pat Patrick (baritone saxophone)
Art Davis (bass)
錚々たる布陣がリーダーたるコルトレーンをサポートする。
「グリーン・スリーヴズ」は1961年5月23日、「アフリカ」と「ブルーマイナー」は同年6月7日の録音。
タイトルのとおり、第三世界の知られざる音楽を、否、その音調を想像によって創造したジョン・コルトレーンの格別なる才能が弾ける(ブラスの饗宴)。それこそエリック・ドルフィーの存在は非常に大きい。盟友の早世がなければコルトレーンのあり方はまた違ったものになったのかもしれない。
特に「アフリカ」は、各々のソロもフィーチャーされ、独特の官能が押し寄せる演奏に脳内が発火、驚くほど気持ち良くなるのだ。