出逢う人・事・モノ、すべてを生かすことを「好生の德」というそうだ。
すべては必要にして必然であり、もともと正も負もないことがわかる。
瞑想については、一切後悔していない。今でも信じているし、時々やっている。同じように、ドラッグをやったことも後悔していない。ドラッグは僕を助けてくれた。誰にでも勧めることじゃないし、自分だってもうやるべきじゃないと思う。でも僕に関して言えば、いい効果があった。インドに行ったのもよかった。インドに行く少し前にヨーコに出会って、滞在中はじっくり考える時間がたくさんあったから、3ヶ月間ひたすら瞑想して考え、帰国してヨーコと恋に落ち、そこでひとつが終わった。あれはすばらしいよ。
(ジョン・レノン、1969年)
~The Beatles アンソロジー(リットーミュージック)P286
ジョンは明るい。
ジョンは(ある意味)世界のからくりがわかっていたのだと思う。
マハリシに師事したビートルたちの変容。
ポールは、自宅に戻り、そこで”Blackbird”を書いた。
スコットランドにあるポールの農場で書かれたこの曲は、ギター伴奏の音楽的なヒントを、彼とジョージがよく一緒にプレイしていた曲—J.S.バッハの〈ホ短調ブーレ〉から得ていた。「構成的にはメロディとベース・ラインのハーモニックな関係が特徴のひとつで、ぼくはそこに魅了された」とポールは回想している。「ぼくはバッハの曲をもとにしたギターでメロディを展開させ、別のどこか、別のレヴェルに持っていった。で、それに合わせて歌詞をつけたのさ」
(1968年6月11日)
~The Beatles Anniversary Edition UICY-78856ライナーノーツP18
なるほど、”Blackbird”はバッハのリュート組曲第1番ホ短調BWV996第5曲ブーレにインスパイアされたものだった。
ちなみに、ジェスロ・タルは同じくバッハのこの楽曲をイアン・アンダーソンのフルートによって表現し、1969年発表のアルバム”Stand Up”に収録した。
コロナ禍前の来日公演で披露された、ブラッド・メルドーの弾く”Blackbird”に痺れた。
メルドーは、光と闇は互いに互いを必要とし、補完し合っているという。世界は2つの相反するものが表裏一体となって形成されており、それは「対(つい)」であり、また「対(つがい)」である。即興的”Blackbird”の深遠な、哲学的(?)風趣に壮大な美の世界を僕は想像する。
・Brad Mehldau:10 Years Solo Live – Dark / Light (2015)
- Dream Brother (Jeff Buckley) (2013.11.5Live)
- Blackbird (John Lennon / Paul McCartney) (2011.9.18Live)
- Jigsaw Falling into Place (Thom Yorke / Jonny Greenwood / Colin Greenwood / Phil Selway / Ed O’Brien) (2011.9.17Live)
- Meditation I – Lord Watch Over Me (Brad Mehldau) (2014.3.10Live)
- And I Love Her (John Lennon / Paul McCartney) (2013.11.8Live)
- My Favorite Things (Richard Rodgers / Oscar Hammerstein II) (2010.3.16Live)
- This Here (Bobby Timmons) (2010.3.16Live)
Personnel
Brad Mehldau (piano)
あるいは、”And I Love Her”の、マイナー調の哀愁帯びるピアノの音色に、あの時演奏された、変幻自在のパフォーマンスの凄さを再確認する(即興の天才!)。諸行無常の人生には、人を愛することもあれば憎むこともある。愛も憎しみも根源は一つなのだとメルドーはたった1台のピアノで表現した(確かに光も闇も相手がなければ存在しない)。
もう一つ、特に感慨深いのは”My Favorite Things”だ。
コルトレーンの長尺な、ある意味破天荒なフリー演奏とは趣を異にし、1台のピアノによってこれほどまでに幻想的な宇宙を創出するメルドーの技量、というか想像力、あるいは創造力に言葉がない。永遠のブラッド・メルドー。
※過去記事(2019年1月30日)
※過去記事(2019年6月3日)
※過去記事(2020年6月23日)